統合失調症の治療に運動を積極的に取り入れることで、脳の機能が著しく改善した?!

日本では100人に1人弱が発症するといわれている統合失調症。まだまだ分からない点がたくさんありますが、その治療法の確立に向けて研究が進められています。その1つが運動との関連性。統合失調症の治療には有酸素運動を行うことがよいことを示唆する研究結果が報告されました。

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統合失調症の治療に運動が良い?!

University of Manchester(マンチェスター大学、イギリス)の研究チームは、統合失調症の治療に有酸素運動を取り入れることで、脳の機能が顕著に改善したことを報告した。

University of Manchesterのプレスリリースはこちら

Aerobic exercise can significantly help people coping with the long-term mental health condition schizophrenia, according to a new study from University of Manc...

論文はこちら

Cognitive deficits are pervasive among people with schizophrenia and treatment options are limited. There has been an increased interest in the neurocognitive b...

論文の要約からすると、これまで行われた10の治験における385人の統合失調症のデータをメタアナリシスという手法で解析したところ、運動により認知機能の改善があるという解析結果を得たという。

統合失調症

統合失調症とは幻聴、幻覚、異常行動などが症状となる精神障害の一つである。

原因は現在のところ不明であり、それぞれの症状が同じ原因で起きているのか、もしくは異なる原因からなる症候群なのかすら分かっていない。

厚生労働省の調査(2008年)により現在、受診中の患者数は79.5万人と推計され、約100人に1人弱が発症するとされている。

こころの病気(精神疾患)についての統計や資料、専門家の研修案内、治療ガイドライン、研究の実施状況など。

治療においては、薬物療法やカウンセリングなどの精神療法、社会生活に慣れるためのリハビリテーションなどが組み合わされ、治療が行われる。

メタアナリシス

今回、用いられた手法としては、メタアナリシスという手法が用いられた。

メタアナリシスは日本薬学会の薬学用語解説では次のように説明されている。

過去に独立して行われた複数の臨床研究のデータを収集・統合し、統計的方法を用いて解析した系統的総説。

引用:公益社団法人 日本薬学会 薬学用語解説 メタアナリシス

つまりこれまでに集められたデータをまとめて解析し直してみたというわけだ。

色々とメリットがあり、それは日本薬学会 薬学用語解説で述べられているので、是非とも目を通してみて頂きたい。

医学系や薬学系の研究に多いように感じられるが、こういった手法は医学系、薬学系の統計データに限らず、データを取る仕事をしている人にとって重要であり、また有用であるだろう。

思考トレーニングのため、”勝手に”考えてみる

論文では細胞レベルからの考察がなされているようだが、そこは餅は餅屋。

専門家に任せておくことにする。

SIGでは思考トレーニングのため、勝手に、そして大まかに考察をしてみよう。

今回のキーワードは「統合失調症」「有酸素運動」「脳の機能の改善」だ。

統合失調症の原因をまるっと丸めてみる

統合失調症は上で述べた通り、精神疾患の一つだ。

私の知識は上に述べたぐらいのことで、そんな深い知識があるわけではない。

こういったときには細かいことは置いておいて、大まかなで重要なところだけ抜き取り、丸めてみるのがいいだろう。

精神に関しては、まだどういったメカニズムか完全には分かっていないようだが、1人の身体の中で起こっていることだと考えると、何らかの化学反応的なものだと考えられる。

その証拠の一つとして、薬物療法で効果があることが挙げられよう。

薬物療法は、絶対に効くというわけでもないらしいが、治療の1つとして主に用いられていることから、効果の差は病状や個人の体内での反応の差としてしまっていいのではないだろうか。

そこでここでは、「体内での何らか化学的変化により起こる疾患」であると定義してしまおう。

もちろんこんな大きな定義では、うつ病やアルツハイマー病、がんや心臓病など全て当てはまってしまうが、それは無視することにする。

「体内での何らかの化学的変化による起こる疾患」が様々あり、その1つが統合失調症だという認識をしておけば良いだろう。

有酸素運動とは何か?

みなさんもご存知の通り、有酸素運動とはランニングやサイクリングのようなある程度一定の運動強度で呼吸をしながら行う運動であり、20分程度行うことにより脂肪の燃焼が始まる運動のことである。

有酸素運動の逆の運動は、無酸素運動であり、この場合は力を一気にかける運動、例えばバーベルを持ち上げるとか短距離走とか、持続的ではなく瞬間的な運動のことをいう。

無酸素運動の場合は、脂肪を燃焼させてエネルギーを得るのではなく、筋肉中の糖分をエネルギーとして一気に使ってしまう。

筋肉にある糖分というのはそれほど多いものではないので、全力でのダッシュは長く続けることができないわけだ。

さてここで注意が必要である。

今回とりあえず並べた「統合失調症」「有酸素運動」「脳の機能の改善」というキーワードからいうと、「無酸素運動」ではダメだと考えてしまうかもしれないが、このキーワードだけでは「無酸素運動」がダメだということは述べていない。

つまり「統合失調症」の患者が「有酸素運動」を行うと「脳の機能が改善」したことが今回言えることであり、「統合失調症」の患者が「無酸素運動」をしても「脳の機能が改善しなかった」ではないということだ。

論文中で述べられていたり、そういったデータがどこかにあるのかも知れないが、今回は無視させていただく。

あくまでもこの3つのキーワードからの思考トレーニングである。

さてここで2つの可能性を考える必要がある。

有酸素運動だけが脳の機能を改善できたという場合と、運動であれば有酸素であろうが、無酸素であろうが構わないという可能性だ。

有酸素運動と無酸素運動を切り分けするポイントは?

この場合は有酸素運動で起こる体内の変化と、無酸素運動で起こる体内の変化を比較して論じる必要がある。

有酸素運動では筋肉の糖分も使うが、脂肪を燃焼させたエネルギーを用いる。

また無酸素運動では筋肉の糖分からエネルギーが作られる。

ではエネルギーを得るというのは、どういうことか?

体内で糖分をエネルギーを使う場合、解糖系と呼ばれる経路により、糖を物質変換してエネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)を得る。

https://ja.wikipedia.org/wiki/解糖系

また、脂肪を燃焼してエネルギーを得る場合は、β(ベータ)酸化と呼ばれる経路により、脂肪を少しずつ変換し、ATPを得る。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Β酸化

つまり得られるエネルギーは両方ともATPであり違いはないが、エネルギーとなる物質は異なるわけだ。

有酸素運動でも無酸素運動でも糖は使われることを考えると、脂肪を燃焼させることが2つの運動を分けるポイントがありそうだ。

 

脂肪が統合失調症の発症の原因となるか?

ここで持ち出すのは仮定と逆説だ。

脂肪の燃焼が統合失調症の改善に良いとしたら(仮定)、脂肪を溜め込むことは統合失調症を発症する原因となる(逆説)かもしれない。

統合失調症のここでの定義である「体内での何らか化学的変化により起こる疾患」の「何らかの化学的変化」というのは「脂肪を溜め込む」ことにあたるわけだ。

そして脂肪を溜め込む=肥満である。

となると今回の研究の結果に対しては「肥満の人が統合失調症を発症し、有酸素運動で脂肪が燃焼され、肥満が解消されることで改善する説」が浮かび上がる。

そこで「統合失調症 肥満」とインターネットで検索をかけてみて欲しい。

たくさんの検索結果が出てくることだろう。

ここで「統合失調症は肥満によってなるんだ!」と早とちりしてはいけない。

さらに色々と調べてみると…

気になったものをちらほらと見てみると、どうも「統合失調症が原因」でなる場合と「薬の副作用」でなる場合があるらしい。

特に分かりやすい説明がされているのが、以下のサイトだ。

統合失調症の治療と悩みの解決法について。統合失調症の患者さんの約半数は、治療前と治療後で体重増加が確認されるようです。専門の先生にお話を伺いました。

このサイトでは以下のように述べられている。

患者さんが太る要因として、「病気の症状」「薬の副作用」「病状の改善」の3つが挙げられます。

引用:2010/11/19 QLife

患者によって肥満の原因が異なり、しかも統合失調症が発症してから肥満になるとすると、私の「肥満の人が統合失調症を発症し、有酸素運動で脂肪が燃焼され、肥満が解消されることで改善する説」は残念ながら否定されてしまったわけである。

糖分でもない…

脂肪が原因でないとすると、運動は有酸素運動、無酸素運動のどちらでも良く、糖分を使うことが重要なのだろうか?

となると「糖分により統合失調症が引き起こされ、糖分をエネルギーとして使うことで病状が改善される説」が浮かび上がる。

「糖分により統合失調症が引き起こされ…」となると、統合失調症の人は、そうでない人よりも体内の糖分が過剰にあることが推測される。

しかし通常、過剰に摂取された糖分は、先ほどのβ酸化の経路により脂肪へと変換され、身体に蓄えられる。

つまり健康な状態であれば、過剰に糖分が蓄積されることはないのである。

糖分が過剰に体内に存在しているのは病気であり、皆さんのご存知の通り糖尿病である。

そこで先ほどの説は「糖尿病により統合失調症が引き起こされ、過剰な糖分をエネルギーとして使うことで病状が改善される説」と変化する。

だが厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス」の治療法 副作用の欄に以下のように述べられている。

薬物によっては高血糖になったり、糖尿病が引き起こされたりすることがありますので、のみ始めの頃に検査の繰り返しが必要な場合があります。

引用:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」 統合失調症

元々は高血糖、糖尿病ではなかった人が薬の副作用で高血糖、糖尿病となるということであれば、「糖尿病により統合失調症が引き起こされ、過剰な糖分をエネルギーとして使うことで病状が改善される説」でもないわけである。

結論

ということで、残念ながら思考が行き詰まってしまったので、なぜ統合失調症の患者の治療において、有酸素運動をすると脳の機能が改善したのかは、私の考察では分からない。

最先端の専門家たちが現在、統合失調症の謎を解明しようと一生懸命研究しているところなので、当然の結果といえば当然なのだが。

もしもっと細かな考察をするのであれば、基礎知識を増やし、引用論文や周辺論文を調べる必要があるだろう。

今回は思考トレーニングということで、この残念な結果で勘弁していただきたい。

しかしながら、脳と身体は密接につながっており、運動をすることで脳の機能が改善することは十分に考えられる。

またうつ病などの他の精神疾患においても、運動療法が取り入れられていることから可能性はあることだろう。

だからと言って、統合失調症の人が無理やり運動をしたり、周りの人が統合失調症の患者に無理やり運動をさせるといったことはことはよくない。

やはり専門医と相談し、治療を行なっていくことが重要である。

まだ統合失調症の原因は完全には明らかとなっていないとはいえ、今回のような知見が得られることで、その治療法が確立する日が来ることを願っている。