バイオ燃料をコンタミネーションから守れ!遺伝子組換え微生物で通常使うことのできない窒素源やリン酸源を使えるように!

色々な汚染があるけれど、バイオの汚染は見えないし、増えるので、一度起こると大打撃!そんな不安を一掃できる微生物が開発されました!

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コンタミネーション

みなさんはコンタミネーションという言葉をご存知だろうか?

日本語で言うと、「汚染」という意味なのだが、バイオの世界ではその汚染もちょっと意味が変わってくる。

バイオの世界では、ある微生物を培養するとき、環境中の微生物が混ざってしまい、増殖してしまうことを、コンタミネーションという。

バイオの研究では、微生物や細胞を分離し、一つの生物種や細胞種にするのが重要な仕事だ。

色々例があるが、一番身近な例としては、日本酒だろうか。

日本酒も酵母という微生物の力を借りて作るものだが、日本酒を作る際、杜氏やそこで働く人は一切納豆を食べないという。

なぜなら納豆は納豆菌が作る食品だが、納豆菌は酵母よりも強くお酒にコンタミネーションして、味を変えてしまうからだ。

また研究室での面白い話としては、ヒトから取った細胞を用いることもあるが、学生が飲み会でビールを飲んだ後、研究室に戻ってきて、細胞を扱うと次の日ビール酵母が増殖してしまい使い物にならなくなっていたなんてこともある。

微生物は見えないし、増殖してしまうので、ほんの少し気を抜いただけで、製品も研究もダメになってしまうのだ。

バイオ燃料

そんなコンタミネーションで大きな不利益を被ってしまう業界がもう一つある。

それは現在、再生可能エネルギーとして期待されているバイオ燃料だ。

バイオ燃料も微生物の力を借りて、とうもろこしやサトウキビなどから採った糖をエタノールに変換させる。

現在のところ、まだ石油にコストの面で勝ててはいないが、今後研究を進め、大規模生産される方向にある。

バイオ燃料を微生物で作らせる際にも、やはりコンタミネーションは問題となってくる。

普段、研究室レベルであれば、培養器はそれほど大きくないので、加圧蒸気で滅菌したり、抗生物質を入れることでコンタミネーションを防いでいる。

だがそれがプラントレベルになると状況は一変する。

全ての部品を加圧蒸気滅菌するにはそれだけの大きさの滅菌器が必要になるし、抗生物質は高価なので、1円でもコストを削りたい大規模プラントでのバイオ燃料の生産には向かない。

そのため、これまでのコンタミネーション防止策とは違った方策が必要となる。

遺伝子組み換え微生物でコンタミネーション防止!

マサチューセッツ工科大学の研究チームは、新しいコンタミネーション防止策を開発している。

それは大腸菌のような微生物を遺伝子操作し、一般的に微生物が使えない形の窒素やリン酸を使えるようにすることで、他の微生物が栄養にできない培地中で目的の微生物を培養する方法だ。

またこの微生物は異なる利点ももつ。

一般的に微生物が使えない形の窒素やリン酸”のみ”を栄養源とする遺伝子組換え微生物であれば、誤って環境中に出てしまったとしても、普通の環境では生きられない。

大量の微生物を使うプラントで、流出してしまった場合にもその有用性が発揮されるのだ。

ROBUST:Robust Operation By Utilization of Substrate Technology

研究チームは、窒素源として通常は微生物の栄養にならないメラミンという物質を用いることにした。

メラミンはその構造中に67%も窒素を保持しており、もしこれを利用できるのであれば、一つの分子から大量の窒素を取り入れることができる。

ちなみに通常のバイオ燃料の生産では、アンモニアが窒素源として使われるが、乳酸菌もアンモニアを窒素源として利用できるため、コンタミネーションしてしまう可能性がある。

研究チームは大腸菌にメラミンをアンモニアや二酸化炭素に変換するための6ステップの反応に関与する遺伝子を組み込んだ。

そしてこの手法をROBUST(Robust Operation By Utilization of Substrate Technology)と名付けた。

大腸菌より酵母?

実験では、この遺伝子組換え大腸菌と実際にコンタミネーションの原因となる微生物を混ぜ、メラミンのみを窒素源とした培養液で育てたところ、コンタミネーションの原因となる微生物は育たず、遺伝子組換えを行ったの大腸菌のみが増殖した。

そして次の段階として、酵母をシアナミドというメラミンの材料として使われる物質を窒素源として利用できるように遺伝子組換えを行い、シアナミドのみを窒素源とする培地で培養することに成功した。

さらにその酵母をホスホン酸ジカリウムというリン酸を含んだ物質を利用できるように遺伝子組換えを行い、自然界でコンタミネーションの原因となる微生物が全く育たない培地で、遺伝子組換え酵母を育てることに成功した。

もちろん大腸菌から酵母に変えたのには訳がある。

酵母にはもともと糖からアルコールを作る代謝経路が備わっており、そのままバイオ燃料の生産に用いれるのだ。

そこで研究チームは、実際にとうもろこしやサトウキビ、セルロースの分解物などを用いて、遺伝子組換えをしていない酵母とその生産性を比較したところ、特に生産性が落ちずにアルコールを生産することに成功した。

一度コンタミネーションしてしまうと、大打撃を受けるバイオ燃料生産だが、このような遺伝子組換え微生物を用いることで、そのロスを最小限に食い止めることができるだろう。

大規模で培養しても、コンタミネーションの不安を無くせるのは経済的にも精神的にもかなり大きなことだと思います。また環境中に流出してしまった場合にも、そのまま死滅するという問題が起こった時の対処もされているという一粒で二度美味しい戦略は素晴らしいですね!

現在研究で使われている微生物も、環境に流出しても生きられない弱い微生物ですが、確かに絶対に死んでしまうかと言われると、なかなか不安は拭いきれません。また実験中でもコンタミネーションは起こるので、滅菌操作をしなくてはいけないのですが、培地を作って数時間以内、そして滅菌操作にも2時間程度かかる結構時間のかかる作業だったりします。そういう意味でも、今後今回の大腸菌や酵母が研究でも使われるようになれば、コンタミネーションの心配も、流出の心配も無くなり、バイオの研究がやりやすくなるかもしれません!

元記事はこちら(Microbial engineering technique could reduce contamination in biofermentation plants. Approach could lower cost and eliminate need for antibiotics during biofuel production.)

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