酵母はアルコールを作るだけじゃない!次なるターゲットは香りだ!酵母と共に進化し続けるバイオテック企業Ginkgoとは?

遺伝子組み換え酵母を用いて、香り成分を作り出す。そんなベンチャー企業が様々な大企業と提携し、拡大を続けています。酵母でどうやって香り成分を作り出すのでしょうか?そして、なぜ酵母で作る必要があるのでしょうか?

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Ginkgo Bioworks

アメリカ マサチューセッツ州 ボストンに拠点を置くGinkgo Bioworks。

この企業はマサチューセッツ工科大学よりスピンアウトしたバイオテックのベンチャー企業だ。

彼らは酵母を遺伝子操作し、小さな小さな工場として用いることで、化学物質をこれまでの合成法よりもより速く、より安く、そしてより効率的に作り出すことを目標としている。

その彼らがターゲットとしてるものは、「香り」である。

香りは鼻の中にある嗅覚受容神経という細胞に香り物質が付着することで感じられる。

この香り物質は立派な化学物質の一つであり、現在、工業的に合成され、食品や香水などに用いられている。

現在は有機合成という化学的手法で作られている香り物質だが、合成方法が複雑で収率が悪かったり、危険な化学物質を使用したりする。

もちろんそうなると合成に時間がかかったり、コストが高くなってしまう。

そこで彼らは酵母を用い、煩雑な操作や化学物質の使用を無くし、コストを低減しようとしているというわけだ。

酵母を用いてどうやって香り物質を作り出すのか?

酵母は古来より日本酒やビール、ワインなど様々なアルコール飲料を作るのに利用されてきた。

酵母は原料に含まれる糖分を食べ、そしてアルコールを作り出す。

アルコール飲料を嗜んでいる人は分かると思うが、出来上がったアルコール飲料には香りが存在する。

もちろん香りによっては、原料だったり、製法によって付くものもあるが、酵母がアルコールを作り出す際に、同時に作り出している香り成分も存在するのだ。

Ginkgoは、酵母がアルコール発酵を行う際に、香り成分も出すことに着目し、自分たちが望む香りを作らせようと考えたわけだ。

提携している企業とは?

このGinkgoは2008年にマサチューセッツ工科大学の卒業生により設立されたが、すでに20を超える大企業と提携している。

提携している企業は、香水や化粧品、殺虫剤、甘味料などを扱っている企業だ。

例えばフランスの香水メーカーであるRobertetはGinkgoとバラの香りを生み出す酵母のデザインに関して契約を結んでいる。

このバラの香りを出す酵母に関してはまだ開発中だが、もうすでにアプリコットやマンゴー、ココナッツの香りを生み出す酵母にまで契約は拡大されている。

また最近新しくパートナーシップ契約を結んだものとしては、カリフォルニアに基盤をおくバイオ材料企業であるAmyrisだ。

この企業とはスキンケア製品や工業用潤滑剤、ジェット燃料など20を超える材料において、今後数年間で商業用にスケールアップすることにおいて提携を結んでいる。

小さな酵母工場のための大きな設備

様々な化学物質を合成するための酵母を素早く作り出すため、Ginkgoは昨年自動化ロボットと設備を兼ね備えた研究所Bioworks1を建設した。

その中ではGinkgoのエンジニアたちが新たな酵母を開発するため、ソフトウェアと何千もの酵素を集めたデータベースと日々格闘している。

例えばある香り物質を作る酵母を開発するとしよう。

エンジニアはその香り物質を酵母に作らせるために必要な酵素を選択する。

選択された酵素の遺伝子を、ロボットが酵母に組み込み、その酵母を生育する。

もし目的の香り物質を作り出す遺伝子が正しければ、酵母はその香り物質を作り出す。

その後、香り成分を抽出し、クロマトグラフィーにより精製する。

Ginkgoはこの酵母をパートナー企業にライセンシングし、パートナー企業は受け取った手順に沿って、酵母を育成、目的の物質を抽出し、自分たちの目的に使用するのだ。

酵母によって材料を作り出す利点

パートナー企業はこのGinkgoが作り出す酵母に期待する利点とは一体なんだろうか?

香り成分を植物などから抽出しようとすると、まず植物を育てる手間がかかるため、コストが高くなる。

またものによっては季節性があり、年中手に入るというわけではない。

さらにはサステナブル社会が叫ばれている現在、製造プロセスがサステナブルではないこともある。

酵母を使うことによって、植物を育てる手間を省け、いつでも手に入り、そしてもっとサステナブルな製造プロセスへの変換というのをパートナー企業は期待しているのだ。

進化し続けるGinkgo

このようなパートナー企業の期待に応えるため、Ginkgoのエンジニアたちは日々、酵母の遺伝子と格闘し、より最適な酵母を作り出すためのデータを蓄積している。

そして進化しているのはエンジニアたちだけではない。

Ginkgoはこの秋にさらにもう一つの研究所Bioworks2の設立を計画している。

新しい研究所を建設することにより、Ginkgoはより多くの要求に応え、さらに技術を進化させようとしているのだ。

このGinkgo Bioworksは遺伝子組み換え技術が大企業を巻き込んで、大きな流れとなっている一例ですね。遺伝子組み換え作物は、組み替えられた作物自体が人の口に入るので、安全性が懸念されています。しかしGinkgoの戦略としては、遺伝子組み換え酵母はあくまでも工場としての役割のみを期待しており、そこから得られた成分を抽出して用いるので、安全性としてはあくまでもその化学物質の安全性が重要になります。

今回のように材料を作り出すという目的において、遺伝子組み換え技術はこれまでの化学合成よりも大きなアドバンテージをもっているように感じられます。ですが忘れてはいけないのは、人が独自に生み出した化学物質もあり、その化学物質を作り出す酵素が存在しないものもちろん存在するということです。そのような物質においては、化学合成のアドバンテージは大きなものとなるでしょう。

バイオも化学もいい点もあれば悪い点もあるので、今後は化学物質を作り出すのに、いかにバイオの技術と化学の技術を融合し、より効率がよく、よりサステナブルな手法へと最適化していくのかということが重要になっていくのかもしれません。

元記事はこちら(Hacking microbes. Startup’s engineered yeast helps clients produce fragrances and flavors more efficiently.)

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