ウイルスの感染・増殖は体内時計の影響を受ける?!冬にインフルエンザが流行る理由まで説明できる研究とは?

ヒトでは太陽の光とともに起きて、太陽が沈むと寝るというリズムを刻む体内時計。近年の研究では、その体内時計が狂うとガン細胞の増殖が速くなったり、肥満などの生活習慣病を促進すると言われています。今回はそれだけではなくさらにはウイルスの増殖までに関わっているという結果が報告されました。

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ウイルスは生物なのか?生物でないのか?

人々に感染し、発熱、下痢、頭痛、倦怠感など苦痛な症状を引き起こし、重症化すると臓器不全や最悪の場合死に至らしめることもあるウイルス。

実はウイルスは、生物ではないという意見があるのはご存知だろうか。

ウイルスはあくまでもタンパク質の殻に遺伝子が包まれた物質であり、生命の原則を満たしていない。

生物というのは、自己増殖能力、エネルギー変換能力、恒常性維持能力、自己と外界との明確な隔離というのが挙げられる。

例えば人間で言えば、生殖により新しい人間を作り出せ(自己増殖能力)、食物を摂取することでエネルギーを得て(エネルギー変換能力)、体温や代謝など体内の環境を一定に維持でき(恒常性維持能力)、明確な身体をもっている(自己と外界の隔離)。

だがウイルスは他の生物に寄生しなければ増殖できず、エネルギー摂取や代謝経路をもっていない。

学術的にも生物か生物でないかというのは長年議論されているが、明確な線引きは難しいのがウイルスの存在なのだ。

では、代謝経路をもたず、自分で増殖できないウイルスは一体どうやって増殖しているのだろうか?

ウイルスの増殖

ウイルスはヒトの体内に入ると、細胞の表面に付着する。

細胞は自分が外から物質を供給するため、細胞の外側に付着した特定の物質を内部に取り込むシステムをもっているのだが、ウイルスはこの仕組みを巧妙に利用し、細胞の内部へと侵入する。

細胞の内部では、常時たくさんの遺伝子やタンパク質が壊されては作られているが、ウイルスはそのシステムを乗っ取り、自分が必要な遺伝子とタンパク質を作らせる。

遺伝子とタンパク質が十分な量作らせたら、うまく遺伝子をタンパク質の殻にパッキングし、細胞から出て行くのだ。

このようにウイルスは寄生した細胞のシステムを利用し、増殖する。

ウイルスの増殖は体内時計の影響を受ける?!

ケンブリッジ大学の研究チームは、このウイルス感染と増殖が体内時計であるサーカディアンリズムに影響を受けることを明らかとした。

上に述べたようにウイルスは寄生した細胞のシステムを巧妙に利用するため、その細胞のリズムによってウイルスの感染のしやすさや増殖の速度が変わるということだ。

研究チームはマウスを用い、12時間を明環境で、12時間を暗環境で飼育し、異なる時間にヘルペスウイルスを感染させ、その感染のしやすさや増殖スピードを検討した。

その結果、朝方にウイルスを感染させたマウスでは、夕方にウイルスに感染させたマウスよりも、ウイルスの増殖が10倍も早かったのだ。

マウスは夜行性であるため、朝方というのは睡眠に入る時間であり、夕方というのは活動を開始する時間である。

つまりは人間で言えば、夜寝る前にウイルスに感染すると体内でウイルスは急速に増殖しやすいということになる。

体内時計を狂わせる〜Bmal1欠損による影響〜

サーカディアンリズムはいくつかのタンパク質により制御されている。

そこで研究チームは、サーカディアンリズムを制御するタンパク質の一つであるBmal1を取り除いたマウスでウイルスの感染・増殖がどうなるかを検討した。

その結果、ウイルスを感染させた時間によらず、ウイルスは速く増殖した。

これはヒトで言えば、例えばシフト制で働き、体内時計がうまく働いていない状態の人は、ウイルスによる疾患がより重症化するかもしれないことを示唆している。

インフルエンザウイルスでも見られる傾向

インフルエンザウイルスにも同様に感染の時間により、増殖速度が異なることがこれまでに明らかになっている。

ヘルペスウイルスとインフルエンザウイルスは遺伝情報を保持している物質が異なり、ヘルペスウイルスはヒトと同じDNAだが、インフルエンザウイルスはヒトではタンパク質を作る鋳型として使われるRNAを遺伝子として用いている。

遺伝子を構成する物質が異なれば、その増殖機構は異なっているが、今回の結果では同じようにサーカディアンリズムを失ったマウスでは増殖速度が増加していた。

これはどんなウイルスでもサーカディアンリズムに影響を受けていると言える。

また、サーカディアンリズムを制御するBmal1の機能は季節によって影響を受けることが知られている。

冬ではあまり機能せず、夏には活発に働くのだ。

これはなぜ冬にインフルエンザが感染しやすくなるかということに関連しているかもしれない。

Bmal1が活発でない冬というのは、サーカディアンリズムがあまり働いていないことに繋がり、サーカディアンリズムが働いていない状況ではウイルスの増殖が速くなるというわけだ。

今回明らかになったサーカディアンリズムとウイルスの感染・増殖の関連性は、もしかしたら新しい治療薬への足がかりとなるかもしれないと期待されている。

前に体内時計が乱れるとガン細胞が増殖しやすいという記事を紹介しました。

体内時計が乱れると、ガン細胞があなたの身体を侵食する?遺伝子が刻むリズムとガンの増殖の関係〜Bmal1とPer2〜
生活リズムを守るというのは、あなたの健康を守ることに繋がります。体内時計とガンの増殖の関係を明らかにした研究がこちらです。サーカディア...

今回はさらにウイルスの増殖も体内時計に依存しているという研究です。どちらもヒトの細胞のシステムなので、確かに体内時計に影響を受けるというのは、聞いたら当然だなと思えるのですが、最初に考え付いた人のアイデア力というは素晴らしいなと思います。しかも今回の研究では、シフトで働く人がウイルスの影響を受けやすいとか、季節でウイルス感染が広まるとかその研究のストーリーというのがきれいに構築されており、思わず「お〜そうだよなぁ」と納得しっぱなしの研究でした。

ガンもウイルスもBmal1が働かないと増殖速度が速まるというのであれば、このBmal1が常時正常に働くような薬剤が開発されれば、ガンもウイルスも恐るるに足らず!ということになるのでしょうが、そんな夢のような薬剤は開発可能なのでしょうか?是非製薬関連の研究をしている人に注目していただきたいなと思う遺伝子ですね!

元記事はこちら(Time of day influences our susceptibility to infection, study finds)

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