カイコにヒトの酵素を作らせ、リソソーム病を克服する?!学術系クラウドファンディングacademistからプロジェクトを紹介!

難病を克服するため、遺伝子組み換えカイコを利用した医療薬の合成法が検討されています。リソソーム病とは何か?なぜカイコを利用するのか?様々な生物を利用している医薬品開発の一例を紹介します!

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リソソーム病

生物は多種多様な細胞が協調的に働くことにより、一つの生命を作っている。

そしてその細胞の中においても、様々な器官が存在し、それぞれが重要な役割を担っている。

例えば、核は遺伝子を保存し、そして遺伝子から情報を読み取る場として機能しており、ゴルジ体は読み取った遺伝情報をタンパク質に変換する。

そのような器官の中にリソソームという器官が存在する。

リソソームでは、不要となったタンパク質や器官、外部から侵入したウイルスなどをアミノ酸として再度利用できるよう分解する機能をもっている。

もしこのリソソームは働かなくなると、細胞内に不要となった物質が蓄積するリソソーム病となってしまう。

このリソソーム病は治療が難しい病気である為、日本では特定疾患(難病)に指定されている。

リソソーム病の原因は不要となったタンパク質を分解する為の70種類ほどの酵素(タンパク質の一種)の遺伝子がもともと無かったり、あったとしても変異があり、酵素が働かないために起こる。

現在の治療法としては、臓器移植や骨髄移植、そして働かない酵素の代わりに正常に機能する酵素を外から加えてやる酵素補充療法が行なわれている。

カイコでリソソーム病を治療する?!

クラウドファンディングサイト「academist」にて、カイコを用いてリソソーム病の治療薬を作るプロジェクトが出資を募っている。

これまで様々な医薬品が多くの生物から発見されてきたが、今回のカイコを用いるというのは、少し趣が異なる。

例えば抗生物質であるペニシリンは、青カビがもともと作り出す物質で、それが他の微生物の生育を阻害することから、治療薬に用いられるようになった。

今回は何もカイコの中に、リソソーム病を治療する物質が見つかった、というわけではないのだ。

リソソーム病の治療コスト

前に述べたように、リソソーム病はヒトの細胞内で不要となったタンパク質を分解する酵素が働かない為に起こる病気だ。

だからこそ外から酵素を入れるという治療法があるのだが、その酵素が現在のところ、ものすごく値段が高いのだ。

だが一度酵素を注入したら終わりというわけではない。

酵素自体もどんどん古くなり、最後には他の酵素によって分解され、アミノ酸として再利用される。

つまり定期的に補充する必要があるのだ。

この方法では、1人の患者を1年間治療するのに医療費が3〜4千万円と非常に高コストとなる。

カイコでヒトの酵素を作らせる!

そこで徳島大学大学院医歯薬学研究部の伊藤孝司教授が考えたのが、カイコにヒトの酵素を作らせることだ。

タンパク質を作らせる生物としては、大腸菌、酵母、枯草菌、哺乳類細胞など様々な生物が存在する。

だがどれも一長一短である。

例えば大腸菌でヒトの酵素を作らせた場合、ヒトの酵素の方が複雑なため、酵素が得られたとしても、機能しない場合も多い。

ではヒト細胞などの哺乳類細胞ではどうだろうか?

哺乳類細胞であれば、機能する酵素が得られるだろう。

だが問題はその量がものすごく少ないことと、ヒトの細胞を育てるのに培養液などが非常に高価なのだ。

カイコは大腸菌や酵母と比べ、ヒトに近いため、ヒトの酵素を作らせた場合、機能する酵素が取れる確率が高い。

また哺乳類細胞よりも、取れる量が大幅に多いというメリットがある。

そしてカイコというのは、唯一家畜化された昆虫で、明治時代の日本を支えた昆虫、つまり日本ではその養殖の技術力にアドバンテージがある昆虫なのである。

伊藤教授の研究チームは、すでにカイコを用いてヒトリソソーム酵素を作らせることに成功しており、それを医療につなげたいというのが今回のプロジェクトなのである。

出資に関して

adademistは研究を題材としたクラウドファンディングなので、みなさんがこの研究に出資をすることが可能であり、プロジェクトによってはリターンもある。

この記事を書いている2016年8月27日現在で出資できるコースは以下のものがある。

¥1,000 研究報告レポート + オリジナルカイコ画像 x1

¥3,000 研究報告レポート + オリジナルカイコ画像 x1 + ポストカード(コメント付き) x3

¥5,000 研究報告レポート + オリジナルカイコ画像 x1 + ポストカード(コメント付き) x3 + カイコポロシャツ x1

¥10,000 研究報告レポート + オリジナルカイコ画像 x1 + ポストカード(コメント付き) x3 + サイエンスカフェ参加チケット

¥30,000 研究報告レポート + オリジナルカイコ画像 x1 + ポストカード(コメント付き) x3 + サイエンスカフェ参加チケット + カラフルな空の切り繭

¥50,000 研究報告レポート + オリジナルカイコ画像 x1 + ポストカード(コメント付き) x3 + サイエンスカフェ参加チケット + カラフルな空の切り繭 + 論文謝辞に名前掲載

¥100,000 研究報告レポート + オリジナルカイコ画像 x1 + ポストカード(コメント付き) x3 + サイエンスカフェ参加チケット + カラフルな空の切り繭 + 論文謝辞に名前掲載 + 伊藤教授とのディスカッション権(1時間)

出資の期限は2016年10月25日までだ。

日本の産業を支えてきたカイコが、さらに日本の医療も支えるかもしれないというプロジェクトです。研究手法として、カイコでタンパク質を大量に作らせるというのは、これまでにもされていますが、本格的に医療に役立てるというのは、もしかしたら初めてなのではないでしょうか?私としては、このプロジェクトを通じて、研究を身近に感じ、そして遺伝子組み換え技術というのが、医療の発展に大きく貢献していることを知ってほしいなと思います。

元記事はこちら(組み換えカイコで「リソソーム病」の治療薬を作りたい!)

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