水を加えることで薬を作り出すシステムの開発!微生物の中からそのシステムだけを拝借する方法とは?

抗生物質、鎮痛剤、咳止め薬、睡眠薬、抗がん剤。いろいろな薬があるけれど、それがどこでも水を加えるだけで作れるようになるシステムが開発されています。微生物の抽出液と遺伝子に水を加えるだけで、欲しい薬が手にはいるシステムは、宇宙開発や遠隔地での治療に大きく貢献できるかもしれません。

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水を加えると薬ができるシステム?!

マサチューセッツ工科大学の研究チームが、ペレットに水を加えるだけで薬を作り出すシステムを開発している。

ペレットには細胞から抽出し、凍結乾燥した様々な酵素や分子が含まれており、室温で長期間保存することができる。

そこに目的の薬剤を作る遺伝子(こちらも凍結乾燥可能である)と水を加えると、ペレットに含まれる酵素などが遺伝子から目的の物質を作り出すという仕組みだ。

このシステムを用いれば必要な薬が必要な時に作り出せる。

ペレット自体は数 mmで、厳密な温度管理などの保存環境が必要では無いため、例えば兵士や宇宙飛行士、遠隔地でも手軽に持ち運ぶことが可能だ。

薬を作り出すタンパク質やDNAの長期保管における問題点

このシステムを開発しているJames Collins博士の研究チームは前に微生物の遺伝子操作を行い、薬を作り出すシステムを発表している。

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このように生物の遺伝子を操作し、生物に新しい機能を追加する学問を合成生物学という。

合成生物学の分野では、燃料を作る微生物やCollins博士が行っているように薬を作る微生物の開発が世界中の多くの研究者によって行なわれている。

だがこのように微生物を持ち運ぶ必要があるシステムでは、その生育を制御する必要がある。

そこでCollins博士が考えたのは、生物の中でも薬を作り出すシステムのみ利用できないかというアイデアである。

微生物の中で薬を作り出すためには、たくさんの酵素やタンパク質が必要となる。

だが酵素やタンパク質では、厳密な温度管理が必要なものや使用期限が短いもの多い。

また異なる薬が必要となった場合、必要となる酵素やタンパク質が異なり、それら全てを長期間安定な状態で保管するのは困難である。

一方でタンパク質の設計図であるDNAは室温、乾燥状態で長期間保存することも可能だ。

このDNAからタンパク質を作り出すのはやはり酵素やタンパク質であるが、こちらの酵素やタンパク質を長期間安定な状態で保管できるのであれば、異なる薬が必要となった場合、DNAを変えるだけで対応が可能となる。

このようなシステムはセルフリーシステムと呼ばれ、現在のバイオテクノロジーの研究の中でも重要な分野の一つである。

凍結乾燥したタンパク質が働くか?

DNAからタンパク質を作り出す酵素やタンパク質は必ず生物の細胞の中に含まれている。

そこで研究チームは、単純に細胞抽出液を凍結乾燥し、ペレット化した。

この中に含まれるDNAからタンパク質を作り出す酵素やタンパク質は少なくとも1年間保管しても機能を失わなかった。

DNAからタンパク質を作り出す反応は乾燥状態では行えないため、研究チームは水を加え、さらに欲しい薬を作り出すタンパク質のDNAを加えることで目的の物質が得られることを確認している。

このシステムは何も薬を作り出すだけではない、タンパク質を作り出すというシステムなので、例えば病気の診断にも利用でき、幅広い応用が考えられる。

前回紹介した研究よりもさらに一歩進んだ形の研究ですね。やはり微生物を持ち運ぶというのは、生育しすぎてしまったり、培養液が必要だったり、育ち過ぎた微生物をどう処理するのかという問題が出てきてしまいます。ですので、微生物の中の薬を作り出すシステムだけ利用するというアイデアは素晴らしいと思います。今後はもしかしたら医薬品がDNAに置き換わり、自宅でいつでもフレッシュな薬を作り出すなんて未来になるのかもしれませんね。

元記事はこちら(To produce biopharmaceuticals on demand, just add water. Freeze-dried cellular components can be rehydrated to churn out useful proteins.)

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