臓器の機能をもったセンシングデバイスの開発!生命の謎の解明や新薬開発をスピードアップ!?

生体という複雑なものを扱うバイオの研究。中身が完全には分かっていないものを少しずつ明らかにしていかなければいけないため、その研究には長い年月がかかります。もしその複雑な研究をより単純化できたら、これまでよりも信頼性の高いデータがよりスピーディに取得できるかもしれません。

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臓器を模したセンシングデバイス

ハーバード大学の研究チームは、3Dプリンタで出力可能な臓器を模したセンシングデバイスを開発している。

まずはこの動画を見ていただきたい。

この動画の中では、心臓の筋肉細胞を黒いインクの中に再現し、心臓と同様の収縮機能をもつデバイスを作り上げている。

これまでの問題点

なぜ彼らはこのようなシステムを作ろうと考えたのだろうか?

そして何に使えるのだろうか?

その答えは現在のバイオの研究の問題点を明らかにしている。

現在、創薬などのバイオ研究では、マウスなどの生物に頼っている部分がある。

例えば、ある病気に対する薬を開発するとしよう。

その際には、その病気のモデルマウス、つまりその病気にかかっているマウスを準備し、そのマウスに薬剤を投与することになる。

もしマウスがこの薬剤により治癒すれば、効果があるというわけだ。

そのために何千、何万ものマウスが犠牲となっている。

現在、マウスの命を尊重し、必要な実験のみ、必要な量だけマウスを使用するよう心がけている。

だが薬は将来人間に投与するため、慎重な検討が必要となり、なかなかマウスの量を削減することは難しい。

そんな時、臓器と同じ機能をもったセンシングデバイスがあったらどうだろうか?

薬剤がそのセンシングデバイスにどのような影響を与えるかを検討できるようになれば、使用するマウスの量を減らすことができるだろう。

もう一つの問題

これも生体を用いることにより起こる問題だ。

マウスやヒトを始めとする生体は想像がつかないほど複雑だ。

もちろん個体によっても少しずつ異なる。

つまりなかなか再現性がある信頼性が高いデータを取るのは難しいのである。

そのため何度も同じ実験を繰り返し、統計学的に信頼性のあるデータを用いることが一般的である。

これはバイオの実験は特に時間のかかる実験が多いことを示している。

もし実験系から複雑性を排除することができれば、より信頼性のあるデータを迅速に取ることができるだろう。

だからorgan-on-a-chip!

そのため研究チームは、ヒトをより単純な臓器単位に分割し、それをチップ上に乗せることで、信頼性のあるデータを取れるシステムを開発しているのだ。

それを彼らは”organ-on-a-chip”(一つのチップ上の臓器)と表現している。

先ほど紹介した動画では、心臓のチップなので、heart-on-a-chip(一つのチップ上の心臓)というわけである。

心臓は人体の中でも全身に血液を循環させ、酸素や栄養素を運ぶ重要な臓器だが、臓器の中ではポンプという役割を担うだけの単純な臓器である。

だからこそ最初の実証実験で用いたのだろう。

スピードアップとコストダウン

このorgan-on-a-chipができるのは何もスピードアップだけではない。

3Dプリンティングできるということは、研究者が自分の研究にあったものをデザインできるということだ。

またこれまででは、細胞単位で観察しようと思うと、高価な顕微鏡だったり、特殊な装置が必要となる。

研究用の装置は安いもので数十万、高いものでは数億円ととても高価なものだ。

だがもしセンサーが自分の好きなようにデザインできるのであれば、その検出系も自分でデザインでき、安価な装置と組み合わせることも可能であろう。

今回の動画では心臓をチップ化しているが、今後はさらに他の臓器もチップ化されることで、バイオの研究が加速され、これまで明らかにできなかった事実や新しい薬剤の開発に用いられると期待される。

現在、バイオの分野は急速に発展してきていますが、生命の真理に辿りつくにはまだまだ長い道のりです。そのため、今ある技術を使い、謎に迫るだけではなく、新しい技術を開発することで新しい発見に結びつける必要があります。もちろんこれはバイオに限ったことではありません。どんな分野においても、新しい技術が開発されれば、どんどんと新しいことが分かっていくのです。

そのために必要なことはやはり異分野の融合でしょう。一つの分野だけではなかなかできなかったことも、他の分野の技術を使うと意外とあっさりできてしまうことはたくさんあるかと思います。

3Dプリンタは現在、工業用から家庭用まで販売されるようになり、これまでできなかったデザインが簡単にできるようになってきています。それをバイオの分野に生かすと、今回のように臓器チップができるというのは、まさに異分野融合の技術ではないでしょうか。

これまで研究では専門分野が細分化されて、それぞれの研究者はより特定の範囲の研究に集中してきましたが、イノベーションが期待されている今、複数の専門性を橋渡しし、新しい技術を生み出していく人材の重要性を増しているのかもしれません。

元記事はこちら(The first fully 3-D-printed heart-on-a-chip. Technique paves the way for more complex, customizable devices)

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