ウイルスの殻を利用するために、どのような形成過程を経るかをコンピュータシミュレーションにより解析!

ウイルスは簡単に言うと、タンパク質の殻に囲まれた遺伝子です。その殻はウイルスによって異なりますが、一つ、または数種類のタンパク質から出来ています。単純な繰り返し構造であるウイルスキャプシドですが、その形成過程は明らかにされていません。そこでシミュレーションを用いて、その形成過程を解明しようという試みが行われています。

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ウイルスの殻

ウイルスの殻はキャプシドと呼ばれる。

キャプシドはたくさんのタンパク質が組み合わさり、中にウイルスの遺伝子を封じ込めている形をしている。

大きさは、約30〜50 nm(ナノメートル:1 mmの100万分の1)と小さい。

キャプシドはナノメートルの大きさで中に物質と封じ込めることのできる構造としては自然界でも有数の強さを誇る。

そのため、様々な分野でこのウイルスの殻を利用しようと研究開発が進められている。

しかしながら、この殻の形成過程に関しては、その小ささのため研究が進んでおらず、応用分野における研究開発の妨げとなっている。

キャプシドのシミュレーション

カーネギーメロン大学とコンスタンツ大学の研究チームは、ウイルスを形成している殻がどの様になりたち、どの様に壊れるかをコンピュータシミュレーションを用いて解析している。

彼らが解析を進めているのは、ササゲクロロティックモットルウイルス(CCMV:Cowpea Chlorotic Mottle Virus)のキャプシドだ。

このウイルスはササゲという植物に感染し、黄色い斑点を作るウイルスである。

CCMVのキャプシドは180の同じタンパク質からできており、まず二つが組み合わさり、二量体(ダイマーとも呼ぶ)を形成した後、この二量体同士が結合しあい、キャプシドを形成することが知られている。

だが面白いことに同じタンパク質からできている一方で、その結合様式がわずかに異なる位置が存在する。

場所によっては5つのタンパク質が結合している箇所と、6つのタンパク質が結合している箇所が存在しているのだ。

シミュレーションにおいては、この6つのタンパク質の結合が先に形成されることが明らかとなり、6つのタンパク質からなる複合体の結合が強く、5つのタンパク質からなる複合体の結合が弱いことが示唆された。

このようにウイルスキャプシドの複雑な形成過程が明らかになることにより、キャプシドの応用利用が加速されることだろう。

小さなものの素早い変化はなかなか測定することができません。ウイルスの構造はX線結晶構造解析法や電子顕微鏡など小さなものを解析する手法で明らかになってきていますが、その形成過程を追う手法というのは現段階では存在しません。

この様な実験で証明できない領域を明らかにしようと急速に発展しているのが、コンピュータシミュレーションです。実験的に明らかになったパラメータを少しずつ蓄積し、コンピュータ上で再現することにより、よりリアルな状況に近い状態でシミュレーションできるようになってきています。

複数の分野が違った角度から同じ研究題材を扱うことにより、様々なことが明らかになりますが、バイオの分野も化学、物理、そしてコンピュータなど多くの分野の参画により、急速に発展していっています。いつの日か人間そのものをコンピュータ上にシミュレーションできる日もくるのでしょうか。そんな日を楽しみにしていたいと思います。

元記事はこちら(Computer Simulation Breaks Virus Apart To Learn How it Comes Together)

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