人によって効き目の異なる抗がん剤。治療前にその効き目を正確に予想する手法により、ガン患者の命を救え!

抗がん剤って人によって効き目が異なるって知っていますか?ある抗がん剤を飲んだとしても、ものすごく効く人もいれば、全く効かない人もいるんです。でも効くか効かないかはその薬を使ってみて、慎重に検討していくしかないのが現状です。もし前もって効く薬が分かっていたら、多くのがん患者さんの命を救えるかもしれません。

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抗がん剤

三大死因の一つであるがん。

悪性腫瘍とも呼ばれ、自身の細胞の遺伝子が傷つくことにより無限に、しかも活発に増殖してしまう病気だ。

肝臓、膵臓、腸、腎臓、皮膚、骨、脳、そして血液など人間の身体の至る所で発症する可能性がある。

ある場所で発生したがんは増殖を繰り返し、ある一定以上の大きさになると、血流に乗って他の場所に転移することもある。

がんが発症すると、がん細胞に栄養を大量に消費されてしまうため身体は衰弱し、機能不全となり、死に至らしめる。

治療では病巣部を切り取る外科手術、薬物などによりがんの増殖を抑える化学療法、放射線によりガンを殺す放射線治療が主に行われている。

化学療法で用いられる薬剤を抗がん剤と呼び、その作用メカニズムとしては、遺伝子であるDNAの合成を止めるもの、DNAを積極的に傷つけ、増殖させないようにするもの、細胞分裂を阻害するもの、代謝を止めるもの、栄養吸収を妨げるものなどがある。

DNA損傷

DNAを損傷させる薬剤は、上述の通り抗がん剤の一つの戦略ではあるが、細胞はDNAを修復する機構ももっている。

そのDNA修復能は人それぞれであり、さらには細胞それぞれである。

そのため、ある患者に効いた薬だからといって、他の患者にも効くとは限らない。

現状では抗がん剤を効くことを願いつつ、何週間もその副作用に耐え、がんのサイズの縮小を検討していく必要がある。

効かなかった場合は、その間にがんはさらに大きくなってしまうリスクもある。

マサチューセッツ工科大学の研究チームは、そのようなリスクを減らすため、それぞれのがん患者のがん細胞に効く薬剤を検討できるシステムを開発している。

DNA修復機能に注目!

上に述べた通り、DNAは損傷は損傷するものであり、さらには細胞はその損傷を修復する機能をもっている。

その修復機構は一つではなく、DNAの損傷の仕方により、修復の仕方も様々である。

研究チームは2014年に4つの異なるDNA修復機能を一度に、そして迅速に測定する方法を報告した。

この方法はリンパ芽球様細胞という骨髄に存在するリンパ球に分化する前の未成熟な細胞を用い、その細胞に4つのDNAを損傷させる遺伝子と1つの蛍光タンパク質を合成する遺伝子を導入する。

もし細胞がDNAの損傷を修復した場合、蛍光タンパク質が合成され、細胞は蛍光色を発するようになる。

この研究により他の人よりも10倍以上もDNA修復能が高い人がいることが明らかとなった。

膠芽腫とテモゾロミド

研究チームはこの研究を進めていくにつれ、この手法は抗がん剤の効果の予測に使えるのではないかというアイデアに至った。

そこで脳の発生するガンである膠芽腫(こうがしゅ、またはグリオブラストーマとも呼ぶ)に対する薬剤の効果を予測できるかを検討した。

膠芽腫の患者に一番最初に検討される抗がん剤はテモゾロミドという薬剤である。

この抗がん剤もDNAに作用するタイプの抗がん剤であり、患者によって効き目が大きく異なる。

この抗がん剤においては、その効き目を予想するために、MGMT(O6-methylguanine- DNA methyltransferase)と呼ばれるDNA修復機能の能力をみる検査法が存在する。

しかしながらこの検査法はいつも正確であるというわけではないのだ。

そこで研究チームは、彼らの手法とMGMTの検査法を比較したところ、彼らの手法の法が抗がん剤の効き目と相関があることが明らかとなった。

患者それぞれによって効き目の異なる抗がん剤。

よく効く薬を早期に発見できるようになることは、がんの治療に大きく貢献することだろう。

がんの治療ってなぜそんなに難しいのでしょうか。その一つには、元々自分の細胞だということがあります。そして正常な細胞だったものが、例えば紫外線や喫煙、生活習慣、ストレスなどで遺伝子がほんの少し損傷し、修復されなかった時に、爆発的に増殖する能力をもってしまった細胞ががん細胞なのです。だからこそがん細胞に効く薬剤は正常な細胞にも効く薬剤となってしまうため、治療を難しくしています。

では他の治療はどうかというと、外科手術も放射線治療も見えるサイズのがんでなければ、取り除くことはできません。また治療できる範囲も局所的になってしまいます。しかしながら、がんは身体中を転移する可能性のある病気。局所的に治したとしても、他の場所にがん細胞が転移していたとしたら、再発する可能性が出てきてしまいます。

だからこそ全身に作用することのできる薬物治療はがんを完治するためには必要な治療になり、外科手術、放射線治療と併用して行われるのです。見えるサイズや切除できる箇所のがんは外科手術で、脳の奥のような切除できない箇所のがんや悪性リンパ腫のような放射線の効きやすいがんには放射線治療を、そして再発防止のため薬物治療をする。これが現在のガン治療の戦略になっているのです。

誰もが患う可能性のあるがん。その発生メカニズムから治療まで様々な研究が進められており、年々がん患者の生存率は向上していることでしょう。がんになっても、風邪のように簡単に治ってしまうという未来が早く来てくれることを願っています。

元記事はこちら(Predicting cancer cells’ response to chemotherapy. Measuring DNA repair capability can reveal tumors’ sensitivity to drugs.)

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