ナイロンの性質を巧みに使い、熱で曲げることが可能な人工筋肉を作り出す!

人工筋肉というと、何やらバイオ的な感じがしますが、現在開発が進められている人工筋肉はなんとナイロンでできています。光を当てることで生まれる熱を用いて、自由自在に繊維を曲げる、そんな人工筋肉がマサチューセッツ工科大学の研究チームにより開発されたようです。

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人工筋肉の開発

筋肉のように伸びたり縮んだりする材料は、ロボットから自動車、飛行機など様々な業界において利用されると考えられる。

現在、マサチューセッツ工科大学の研究チームは、そのような人工筋肉を低コストで作り出す技術の開発を行なっている。

鍵となるのは、安く、大量に存在する物質。

彼らはそのような条件をもつナイロンに注目し、人工筋肉を作り出した。

伸縮自在な人工筋肉と曲げ自在な人工筋肉

彼らはこれまでにもナイロンを使って、人工筋肉を作り出している。

前に報告したのは、ナイロンのフィラメントを撚り合わせ、筋肉のように伸縮自在の人工筋肉だ。

だがこれまでに安価で単純な構造を用い、ヒトの指や手足のように曲がる動作を行う材質は開発されていなかった。

安価で単純なシステム

実は曲がる動作ができる材質が全く無かったわけではない。

例えばカーボンナノチューブを撚り合わせて作った繊維なんかがそうである。

カーボンナノチューブを使うと素晴らしい耐久性が得られるし、形状記憶も可能だ。

だがカーボンナノチューブはまだまだ高価な材料であり大量に使用するとなるとコストがかかる。

また形状記憶材料として用いた場合は、その耐久性が劇的に下がってしまう。

つまり「安価」で「大量に利用」という条件を満たす人工筋肉としては、残念ながら使えないわけだ。

熱によるナイロンの特殊な性質

研究チームは安価なナイロンを用いて、単純な工業的プロセスにより、十分な耐久性をもつ人工筋肉の開発を試みた。

我々の生活にも密着しているナイロンは、なかなか特徴的な性質をもっているという。

熱を加えると直径は広がるが、長さは縮まるのだ。

この性質を利用し、長さを変えられる材料はいくつか作られているが、曲がるという動作においては、滑車やリールのような構造を使う必要があった。

そのような構造を使うと、サイズは大きくなるし、複雑に、そして高価になってしまう。

不利な点を有利な点に!

そしてこのようなナイロンの熱による伸縮においては、不利な点も存在する。

熱で収縮させるのだが、伸ばすためにはその熱を取り除く、つまり冷やしてやらなければいけないのだ。

だが彼らはここで曲げる仕組みを思いついた。

ナイロンの繊維に対し横から光を当て、片側に熱を加えることにより、光が当たった側が早く収縮させるという方法だ。

だが光を当て続けると、逆側にまで熱が伝わり、せっかくの曲げる動作を打ち消してしまう。

ナイロンで作り、熱により十分に曲がり、さらに熱を伝えにくい構造を作る必要があるのだ。

釣り糸からの脱却!

前回彼らは熱により伸縮できる人工筋肉を作製した際には、釣り糸を用いている。

今回も釣り糸を用い研究を始めたのだが、熱の伝わりを考慮し、中空のナイロンファイバーに変更している。

その穴の形も円形、三角形、四角形と状況に応じて使い分け、光の当て方を工夫することにより、人工筋肉で円を描いたり、8の字を描いたり、さらにはもっと複雑なパターンを描かせることに成功している。

もちろん耐久性も十分で、少なくとも10万回の曲げ伸ばしに耐えることができるし、1秒間に17回曲げ伸ばすことも可能である。

新しく生み出された熱により曲げることができる安価な人工筋肉。

伸縮自在な人工筋肉と合わせ、様々な用途が考えられることから、広く利用されることになるのかもしれない。

人工筋肉というと、事故や病気などで身体の一部分を失った人に移植する筋肉という感じがしますが、どうやらロボットや自動車などのエネルギー消費量を抑えるために開発が進められているようです。

熱というのはそこら中にあり、熱の偏りもそこら中にあります。今回の人工筋肉とその熱の流れをうまく用いることで、電気などの追加のエネルギー無しに、自動で動くシステムというのが構築可能になることでしょう。今回の人工筋肉も風力発電や太陽光発電の自動追尾システムのために用いることも考えられており、かなりのエネルギー削減に繋がるかもしれません。

何より驚きはナイロンという生活に密着した素材でこのような最先端の研究が行われていることです。意外と生活の中にも研究のネタというのがあるのかもしれませんね。

元記事はこちら(Nylon fibers made to flex like muscles. MIT engineers find a simple and inexpensive new approach to creating bending artificial muscle fibers.)

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