SFでよく語られるシリコン生命体は可能なのか?指向性進化という技術を用い、その謎を追う研究とは?

なぜ生命は炭素を選んだのか?それは生命の歴史にとって、大きな謎の一つです。性質的に似ているケイ素も環境中に大量にありますが、自然界ではケイ素をメインで使う生命体は発見されていません。ケイ素は生命にとって使うことができないのか?そんな疑問に答える研究がこちらです。

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シリコン生命体は可能なのか?

有機物は炭素が含まれている物質の総称として使われる言葉だ。

人間を含む生物はすべて炭素をベースとして作られているため、有機物生命体と言える。

だが地球上には炭素に似た物質がある。

それがケイ素、つまりはシリコンだ。

炭素もケイ素も同族で、4つの結合を作ることができるため、他の元素と比べ、多様な物質を構成することができる。

このような性質から、ケイ素生物はいるのではないかと人々を魅了し、時にはSF小説などで取り上げられてきた。

だがケイ素からできている生物は地球上では発見されていない。

生命としてケイ素を利用することは可能なのか、そんな謎に挑戦している研究チームが存在する。

有機物質にシリコンを導入する

カルフォルニア工科大学の研究チームは、ケイ素が生命体にとって利用可能なのかを検討するために、炭素ベースの分子にケイ素を導入することを検討した。

生命体がケイ素をミネラル分として利用することはあっても、炭素の代わりに分子の骨格に使うことはない。

生命を構成しているタンパク質やDNA、脂質などの骨格には例外なく炭素が使われているのだ。

炭素は確かに環境中に豊富に存在しており、様々な分子と多くの結合を作るのに適しているため、生命の骨格を作るのに使われることは納得できる。

しかしケイ素も地球上で二番目に多く存在する元素であり、炭素と同じく4つの結合を同時に作ることができる。

少しくらい炭素の代わりに使われてもおかしくないのだが、まったく使われている気配はない。

そこで研究チームは無理やりケイ素をメインで使うような環境に微生物を置き、その変化を検討した。

Directed evolution

そのような手法をDirected evolution(指向性進化)と呼ぶ。

この手法は1990年代初頭に開発され、現在でもより活性の高い酵素や微生物を開発するために使われている。

例えばよりアルコール合成量の多い酵母を得たいとしよう。

酵母はアルコールを合成するが、培地中のアルコール濃度が高まると、自身の成長を停止させてしまう。

そこで最初はアルコール量の少ない培地で育て、その環境で成長速度の速い酵母を選び出す。

その酵母をアルコール量を少し高めた培地で育て、また成長速度の早い酵母を選択する。

これを繰り返すことにより、酵母はアルコール耐性を少しずつ身につけるよう進化していく。

何度も繰り返すとこれまでよりも高いアルコール濃度でも生育が止まらない、つまりさらにアルコールを生産する酵母が得られるというわけだ。

Cytochrome c:シトクロムc

実験ではアイスランドの温泉から採取された微生物を用い、シトクロムcという分子にターゲットを絞った。

シトクロムcはあるタンパク質から電子を受け取り、他の分子に渡す、電子を受け取った分子は活性化され、新しい元素が結合したり、他の分子を分解したりと、様々な化学反応が起こる。

このシトクロムcの電子伝達能を用いて、新しい分子を作る際、その骨格にケイ素を導入しようというわけだ。

このシトクロムcには鉄イオンが含まれ、化学反応に使われているが、研究チームはまず遺伝子操作技術を使い、この鉄イオンの反応物質としてケイ素が使えるようにデザインした。

その後、指向性進化の実験を行い、新たに生み出された分子にケイ素が含まれているか検討を行った。

実験の結果

その結果、たった3回進化させただけで、新たに生み出された分子にケイ素が取り込まれるようになり、15回進化させると効率的に取り込まれるようになった。

生体内の炭素がすべてケイ素に置き換わったわけではなく、新たに合成された分子の一部にケイ素が取り込まれただけだが、これは産業的に大きな意味をもつ。

現代では化学反応を用いて、炭素骨格をメインとしつつも、ケイ素を含む製品、例えば医薬品や農薬、塗料、半導体などが大量に使われている。

このような製品を作る際、有毒な物質を用い、大量のエネルギーを使い合成することも珍しくない。

だが微生物や酵素を用いて合成できるとなれば、有毒な物質を使うことなく、常温、常圧といった温和な条件で反応を行うことができる。

今回の研究は、シリコン生命体ができるかといった大きな謎は残されたままではあるが、その可能性を示しつつ、産業に大きな貢献ができるかもしれない研究であると考えられる。

確かに炭素もケイ素も環境中に大量に存在するため、少しくらい炭素の代わりに使われていても不思議ではありませんよね。むしろ炭素生物の他に、ケイ素生物が別に進化を遂げていてもおかしくはないことでしょう。しかし現実にはそのような生命体は見つかっていません。これはなかなか大きな謎ではないでしょうか?

ですが全く生命がケイ素を使っていないというわけでもないのです。もちろんミネラルとして体内で微量は必要とされていますし、珪藻類などにおいては、外側の骨格を利用するのに使われています。しかしながら生命の中核とも言えるタンパク質やDNAに使われている例は存在しません。何故、ケイ素の利用がそのように限定的なのか、ずっと人々を魅了してきた謎なのです。

ケイ素は産業的にはかなり重要であり、半導体として多くの電子製品に使われています。生命が積極的に利用しないケイ素を、人間の生活を向上させるために大量に利用されているというわけです。その住み分けというのはまたなかなか面白い進化の歴史なのかもしれませんね。

元記事はこちら(Bringing Silicon to Life. Scientists persuade nature to make silicon-carbon bonds)

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