【オピニオン】最新科学を知り、研究結果を理解することの重要性。血液交換による若返りビジネスから垣間見える理解不足とは?

アメリカで若い人の血液を高齢者に輸血することでアンチエイジングするというビジネスが行われているようです。これはある研究結果を信じて始められたビジネスなのですが、近年の研究結果ではその効果は否定されています。ではなぜそのようなビジネスが行われ、利用する人がいるのでしょうか。

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若い人の血液を輸血することでアンチエイジング?!

ヤフーが運営するキュレーションメディア「ネタりか」に興味深いニュースが掲載されていた。

それは若い人の血液を高齢者に輸血して、アンチエイジングをするというビジネスがアメリカ カルフォルニア州で行われているというニュースだ。

若い人たちの透明感のあるすべすべの肌、シワのない手の甲、ツヤのある髪。見えなくても内臓、血管、神経&

2005年にカルフォルニア大学バークレー校の研究チームが発表した若いマウスと高齢のマウスの血液を循環させたところ、高齢のマウスが活発さと健康さを取り戻したという研究結果がその元にある。

確かに研究結果でそう報告されているのであれば、アンチエイジング効果があるだろうと考えてしまうのも頷ける。

論文発表した研究者自身が反論を発表?!

だが話はそこで終わらない。

カルフォルニア大学バークレー校の研究チーム自体が、2016年11月に違う見解を示す結果を発表しているのだ。

その発表はSIGでも取り上げており、高齢のマウスが活発化したのは、高齢のマウスに含まれる阻害物質が薄められただけで、若返ったというわけではないというものである。

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そのためこのサービスは現在、研究者から多くの批判を浴びているらしい。

では何故、このようなビジネスが開始され、そのサービスを利用する人が出てきてしまうのだろうか?

インパクトと真実

大学では社会とはあまり関係のない基礎研究が主に行われていると思いがちであるが、申請書を書き、予算を取ってくるためには、社会にインパクトを与えることを言わなければならない。

つまりこんなイノベーションが起こせますよ!と言わなければ、何故予算を付けてまで、その研究を行わなければいけないのか、追及されるわけである。

今回のビジネスにおいては、そのインパクトに飛びついた可能性は高い。

もちろんカルフォルニア大学バークレー校の研究チームが、誇張しすぎたり、嘘をついたというわけではない。

若いマウスの血液を高齢のマウスに入れることにより、活発になったという研究結果は真実だろう。

だが本当に理解しなければいけないのは、その裏に隠された真実なのである。

真実はまだ確定していなかった?!

つまり高齢のマウスが本当に若返ったのか、それとも他の要因があるのかである。

結果だけ見れば若返ったように感じられるだろう。

しかし研究チーム自身が何故高齢のマウスが活発になったのか調査を続けたのには、まだそのメカニズムは解明されたわけではないし、もしかしたら裏に隠された要因があるのかもしれないと考えたからだろう。

つまり研究結果は”確定したもの”ではなかったわけだ。

最新の研究においては、短期間の研究だけでは完全にメカニズムを解明しきれないことは多々ある。

判明したことを少しずつ発表し、最終的に謎の全体像を解き明かすのが、現在の研究なのである。

それにも関わらず、研究の内容を十分に理解せずに、表面だけを捉え、飛びついたことから多くの批判を受けているのが今回の輸血によるアンチエイジングサービスなのだ。

疑いをもって研究を進める?

今回は研究チーム自身はまだメカニズムが解明できていないことを理解し、研究を進めていたのだが、時には研究者自身が理解できておらず、インパクト(さらにはその先の予算獲得)だけを求めて論文発表をしてしまうケースも、残念ながら存在する。

つまり発表された論文を鵜呑みにしてはいけないのだ。

発表された論文は全て正しいという考えのもとで行動するのは、ものすごく危ない橋を渡っているのである。

また研究者自身にとっても、一つの考えに捉われず、自分自身で自分の研究を疑い、絶対に反証できない形で研究を進めていくことが重要だろう。

しかしながら、そのような研究の仕方は時間がかかってしまう。

現在の短期間で結果を出し続けなければ、予算の獲得が続けられない現状においては、ものすごく苦痛を伴う研究のやり方かもしれない。

しかしながら正しく科学を発展させていくには、必要な苦痛なのだと私は考えている。

知識を得ることの必要性

また研究者自身が反証できない確固たるデータを出すだけでは、実は十分では無い。

それを正しく読み取る周囲の研究者がいて、さらにはそれをビジネスに利用しようとする企業の開発者が正しい知識をもってビジネスに展開する必要がある。

さらにはそれを利用する消費者にとっても、知識をもっていることは重要である。

例えば今回の輸血アンチエイジングビジネスでは、血液を交換することのリスクを知っている必要がある。

現在の医療においては、血液は病気の感染リスクや拒絶反応のリスクを伴うことから、できれば自己血輸血を行う方が良いとされている。

それなのに軽々と他人の血液を、しかも大量に輸血しようというのは大きなリスクを伴うことが容易に想像できることだろう。

つまり研究者、開発者、消費者のそれぞれの立場で理解しなければいけないレベルというのは異なるが、最低限の情報を知っていなければ、自分のリスクを増大させるだけなのである。

SIGの方針として

SIGは正しい知識を、正しく理解してもらいたい、そしてそのトレーニングになればという思いで運営しています。

そしてそこからみんなでイノベーションを起こしていきたいのです。

だからこそはっきりとした情報ソースを明かすし、できる限り理解できるよう噛み砕いて記事にしたいと頑張っています(完璧にそれができているとは口が裂けても言えないですが…そこはご勘弁下さい)。

そして絶対にして欲しくないのは、そんなSIGに載っている情報は全て正しいという目で見て欲しくないということです。

私も人間ですので、間違えることもありますし、理解しきれていないこともたくさんあります。

いい意味で疑いの目をもつ、そんな人が増えることにより、科学は正しく発展し、大きなイノベーションが起こせるのだという思いでSIGを運営しています。

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