HIVと戦うために、免疫系を休ませるという戦略は有効かもしれない!I型インターフェロンを阻害する新たな治療法に関して!

ウイルス感染時に免疫系を活性化する働きがあるI型インターフェロン。でもHIVと戦うためには、I型インターフェロンの働きをブロックして、一度免疫系を休ませるという戦略がいいのかもしれません。これまでの治療とは逆を行く治療法ですが、マウスの実験において、効果的かもしれない研究結果が得られたようです。

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I型インターフェロンの働き

カルフォルニア大学ロサンジェルス校の研究チームは、I型インターフェロンと呼ばれるタンパク質の働きを阻害することにより、免疫系が回復し、抗ウイルス薬を用いたHIVの増殖抑制を加速できることを発見した。

I型インターフェロンはウイルス感染により合成が誘導されるタンパク質であり、ウイルスの複製を抑制する機能がある。

そのため、今回I型インターフェロンの働きを阻害することにより、治療を行うというのは、これまでの研究の流れとは全く逆の考えとなる。

CD4細胞とCD8細胞

HIVは免疫細胞であるCD4 T細胞を破壊し、免疫系を機能不全とするウイルスである。

通常、ウイルスが感染するとI型インターフェロンが体内で合成され、CD4 T細胞の働きを活性化する。

その後、CD4 T細胞からCD8細胞へとウイルス感染細胞を破壊するシグナルが送られ、ウイルス増殖を阻害する。

だがHIVはCD8細胞のターゲットにならないよう定期的に自身の遺伝子を変化させることで、CD8からの攻撃を巧みに逃れてしまうのだ。

何を逃れたHIVが体内に存在することで、ヒトの免疫系は常時活性化された状態が続き、だんだんと疲弊してくると、最終的にCD4 T細胞の機能は失われ、免疫系は破壊されてしまう。

まずは体力回復

そこで研究チームは、免疫系を活性化するI型インターフェロンの働きを阻害することで、免疫系の疲弊を防ぎ、再度HIVと戦うだけの力を回復させようと考えた。

さらに抗ウイルス治療を並行して行うことにより、免疫系の回復とHIVの体内からの根絶ができるのではないかと推測した。

研究チームは骨髄と胸腺、そして免疫細胞の遺伝子をヒトの遺伝子と取り替えたヒト化マウスを用いて、実験を行なった。

HIVを感染させたこのマウスにI型インターフェロンの機能を阻害する抗体を用い治療したところ、免疫系は疲弊状態から回復し、HIV感染細胞を取り除くために十分な量のCD8 T細胞を作り出すことに成功した。

さらに抗ウイルス治療と組み合わせることにより、抗ウイルス治療の効果は有意に加速された。

まだマウス実験の段階であり、ヒトにおいて同じ効果が得られるのかは不明であるが、I型インターフェロンの阻害を行うことで、免疫系が回復できるという研究結果は今後HIVの新たな治療方法を切り開くかもしれない。

今回の研究結果は、免疫系であれ、人であれ、疲弊している時には、一度休むというのは重要だということを示唆しているのかもしれませんね。よく考えてみると、例えばがんの治療においては、手術や薬物治療、放射線治療に耐えうるだけの体力をまずつけてから、そういった治療を行うということがありますよね。

でもHIVの治療では、あくまでもウイルスの増殖を抑えるのがメインであり、免疫系を積極的に回復させるという手段は取られていなかったのではないでしょうか。今回の結果は、何故免疫系が破壊されるのか、そのメカニズムが解明されたことにより、免疫系を休ませるよう働きかけてみるという新しいアイデアに繋がったことから得られたものだと思います。現象を正確に掴み、違ったアイデアを思いつくというのは研究をする上で、非常に重要なことなのだなということを肝に命じて今後も研究を進めていきたいものです。

元記事はこちら(Protein that activates immune response harms body’s ability to fight HIV. UCLA-led researchers suggest that blocking type I interferon may help combat the virus that causes AIDS)

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