蚊に共生している微生物がウイルスの感染拡大を防止する?!高温に強いWolbachia種を発見!

蚊は人間の血を吸うだけではなく、感染症を拡大させることがあります。そのような感染症にはジカ熱やデング熱など治療法が確立されていないものもあり、地球温暖化による蚊の生息地域の拡大とともに、こういったウイルスの拡大が懸念されています。近年、蚊に共生している微生物がウイルスの拡大を防ぐことが明らかになり、盛んに研究されていますが、特定の地域においては、実験が上手くいかないこともあるようです。

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wMel Wolbachia (ボルバキア)

メルボルン大学の研究チームは、現在、デング熱などのウイルスを撲滅するために用いられているwMel Wolbachia種は、熱に弱く、熱帯地域では十分な効果が発揮できない可能性を報告した。

Wolbachiaは、昆虫などの体内に存在する共生微生物の一種である。

近年、Wolbachiaの一種 wMel Wolbachiaをもっている蚊は、蚊の間においてデングウイルスやジカウイルス、チクングニアウイルスの感染を抑制することが明らかとなった。

蚊の間において感染が抑制できれば、世代を経るごとに、このようなウイルスをもった蚊は減少し、やがては撲滅することができる。

そこで現在、様々な研究機関がwMel Wolbachiaをもった蚊を野外に放し、この種をもった蚊を天然で繁殖させることにより、ウイルスを撲滅しようという研究が進められている。

上手くいかないケースが?

実際にケアンズのある地域で行なった実験では、wMel Wolbachiaをもった蚊が天然の蚊と繁殖し、この微生物をもつようになってきているという。

だが、他の地域で行なった野外実験では、なぜか上手くいかなかったり、その広がり方が極端に遅いというケースが発生した。

そこで研究チームは、wMel Wolbachiaを研究室にて環境温度を26度から37度まで変化させ、その生存率を検討した。

その結果、wMel Wolbachiaは高い温度条件下では生存率が顕著に減少することが明らかになった。

つまり上手くいかなかったケースは、熱帯地方など高温の地域だったため、wMel Wolbachiaが死んでしまったというわけだ。

高温に強いWolbachia

研究チームは、並行して他の種のWolbachiaを検討したところ、いくつかの種においては、高温条件下においても十分に生存することができた。

またこれらの種においても、ウイルス感染を抑える効果はあるという。

蚊を媒介にしたウイルスによる死者は増加傾向にあり、デング熱だけでも年間2万人が犠牲になっており、そのほとんどが子供である。

そのような状況を改善するために、また地球温暖化によりこのようなウイルスが拡大する前に早急に対応が必要となる。

今回発見された高温に強いWolbachia種がその強力な防御策となることが期待される。

こういった微生物を用いた感染防除は、確かに便利ではあるのですが、生態系を壊す可能性もあり、慎重に研究が進められています。ただ天然のものを使うということで、遺伝子操作をした生物を野外に放すよりは比較的ハードルは低いことでしょう。

しかしこれまでWolbachia種の耐熱性を検討していなかったのは驚きですね。この微生物は蚊だけではなく、様々な昆虫に共生していることから、環境適応性が高いと考えたのでしょうか。それとも昆虫から分離して培養する技術がなかったのでしょうか。共生微生物だと、単離するというのが困難な場合もあり、その微生物の性質を調べることができない場合も少なくありません。

なんにせよ目的だった高温に耐え、そしてウイルス感染を抑えることのできるWolbachiaの一種が見つかったことで、適応範囲が広まり、ウイルス感染拡大に大きく貢献してくれると期待したいものです。

元記事はこちら(Bacteria deployed to destroy mosquito-borne dengue can’t take the heat)

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