カルシポトリオールとフルオロウラシルを混合することにより、前がん病変である日光角化症を効率的に治療することができるかもしれない?!

太陽の光に含まれる紫外線により引き起こされる日光角化症。黄色人種である日本人ではあまり発症率は高くありませんが、紫外線に比較的弱い白色人種にとっては、皮膚がんに進行するかもしれない日光角化症は早めに治療することが勧められます。その治療をより効率的に行うため、治療法の開発が進められています。

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日光角化症

長時間、皮膚が太陽の光に曝されると、光に含まれる紫外線により、皮膚がガサガサでうろこ状となる。

これは日光角化症と呼ばれる症状であり、放置しておくとがんに進行する可能性がある。

現在の日光角化症の治療は痛みを生じたり、外皮が厚くなったり、感染の原因となる副作用を生じることがある。

そして治療には4週間以上という長期間が必要となる。

カルシポトリオール

ハーバード大学の研究チームは、カルシポトリオールと呼ばれる乾癬治療薬とフルオロウラシルと呼ばれる日光角化症治療薬を組み合わせることにより、効率的に日光角化症の治療が行えることを報告した。

カルシポトリオールは皮膚の免疫活性化タンパク質であるTSLPの合成を誘導する薬剤である。

喘息や湿疹などのアレルギー性の炎症では、このTSLPが過剰に合成されている一方、TSLPはがんの発生を抑えているという報告がある。

この報告ではカルシポトリオールによる治療を行ったマウスでは皮膚がんの発症が遅くなり、発症したとしても数が少ないか、サイズが小さいということが述べられている。

カルシポトリオールとフルオロウラシルの混合効果

しかしながら医療としてカルシポトリオールが利用できる濃度では、日光角化症の治療において限定的な効果しか得られず、また日光角化症を患っている皮膚において免疫系が活性化されることは実証されていなかった。

そこで研究チームは医療として利用できる0.005%のカルシポトリオールを日光角化症に用いられる5%のフルオロフウラシルのクリームに混ぜ、カルシポトリオールの免疫活性作用が増強されるかを検討した。

その際、65人の患者に対しては、カルシポトリオールとフルオロルラシルの混合薬を67人の患者に対しては、フルオロウラシルにワセリンを混合薬を用いて効果を比較した。

各患者には準備期間として1日に2回、4日間フルオロウラシルを患部に塗布してもらい、条件を一定にした。

フルオロウラシルでの治療は少なくとも7日間経たないと日光角化症に対する効果は得られない。

その後、カルリポトリオールを含むフルオロウラシルの軟膏を塗布してもらった。

その際、免疫系が活性化されているかどうかを確認するために、患部以外にも塗布してもらい、炎症を起こすかどうかを検討した。

治療の効果は?

8週間の治療で、カルリポトリオールとフルオロウラシルの混合薬を処方された患者では、日光角化症の病変部の数とサイズが劇的に減少することが明らかとなった。

カルシポトリオールを混合していないフルオロウラシルを処方された患者と比較すると、混合薬を用いた患者では顔部の病変が平均88%減少したのに対し、非混合薬を用いた患者では26%の減少に止まった。

またこれまでの治療ではあまり改善しなかった病変部が肥大している患者においても、顕著に病変部の減少が見られた。

さらにこれまで日光角化症の治療を受け、今回混合薬を処方された患者においても、82%の治療の効果が見られた。

今回の研究はこれまで開発された治療薬を組み合わせ、異なった疾患に処方することにより、劇的な変化が得られるという一例であり、今後治療法を開発する新しい手法になるのかもしれない。

日光角化症はあまり日本人にとっては馴染みのない病気かもしれません。SIGを運営している上で、大体の病気に関しては聞いたことはあるのですが、日光角化症に関しては最近まで知りませんでした。ただ長い間紫外線を浴びることで起こるということなので、オゾンホールにより日本の紫外線量も増大している現在、日本人にとっても無視できない病気かもしれません。

今回は二つの薬の組み合わせで、これまでよりも顕著な薬効を得るという研究でしたが、今後はこういった研究も広く行われるのではないかと考えています。薬剤を開発するには長い期間と大量の資金が必要となるため、現在使われている薬剤を他の疾患に利用するドラッグリポジショニングという戦略が進められているためです。

これまで様々な薬剤が開発されてきた蓄積がこのような戦略を可能にしており、もしかしたらこれまで脚光を浴びなかった薬剤が突然大量に利用されるようになるなんてことがあるかもしれませんね。

元記事はこちら(Topical treatment clears precancerous skin lesions. Calcipotriol and fluorouracil found to activate immune system and suppress skin cancer development)

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