びゅんびゅんゴマの原理を利用した超低コストで電力が必要の無い遠心機を作ってみた?!

病気や怪我において、どういう治療方針を立てるのか、その第一歩が症状を正確に把握する「診断」であると言えるでしょう。しかし発展途上国では診断するための分析機器がないばかりか、そういった機器を動かす電力すらない地域もあります。そういった地域で使える新しいツールを作ろうと研究を進めている人たちがいます。

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超低コストの遠心機

スタンフォード大学の研究チームは、超低コストで人力の遠心機を開発した。

遠心機というのは、バイオの研究においてなくてはならないツールの一つである。

単純に言えば、液体サンプルをチューブに入れ、それを回転するテーブルに固定し、電気で高速に回転させる。

そうすると遠心力により、液体サンプルの成分は重さによって分離することができるのだ。

例えば血液を分離すると、重い赤血球は下にたまり、軽い血漿は上にたまる。

このようにした分離した溶液を用い、病原菌の特定などを行う。

しかしながら電気を用い高速回転させるため、発展途上国などでインフラが整っていないところでは用いることができない。

そういった場所において、病気を特定するため、どのようにしてサンプルを分離するのか、それが重要な課題であった。

びゅんびゅんゴマ

そこで研究チームがアイデアとして用いたのが、日本でいうびゅんびゅんゴマ。

ダンボールや厚紙を円形や四角などの形に切り、二つの穴を開け、そこに紐を通し、結ぶ。

両はしから引っ張ると、糸を通したダンボールなどが高速で回転する。

誰もが一度はやったことがあるのではないだろうか。

研究チームはこの原理を用い、血液を分離するツールPaperfugeを作り上げた。

名前の由来は、Paper(紙) + Centrifuge(遠心する)= Paperfugeなのだろう。

Paperfugeの実力は?

このPaperfugeは紙、糸、プラスチックのトータル20セントで作ることができ、125,000回転/分で回転し、1.5分で血液サンプルを分離することができる。

もちろん電気は必要はなく、人力でできてしまう。

このびゅんびゅんゴマでは、糸の引き伸ばしを回転の力に変えているため、早くなったり、遅くなったりするのだが、最高速度125,000回転/分というのは、実際に研究で用いられている遠心機よりずっと早い。

遠心機には様々な形があり、卓上の遠心機、冷却しつつ回せる遠心機、さらには超高速で回せる超遠心機などがある。

通常使うのは、卓上の遠心機か冷却遠心機だが、この場合は14,000回転/分くらいのスピードで回転させる。

つまりPaperfugeの10分の1くらいというわけだ。

超遠心機と呼ばれる真空中で超高速に回す遠心機だと、150,000回転/分になる。

この超遠心機は価格にして数百万から数千万といったところだ。

もちろんPaperfugeでは回転の制御が完全にコントロールできているわけではなく、むしろできない。

そのため単純に価格の比較はできないが、最高スピードだけでいうと信じられないくらい早いというのが感じてもらえるだろうか。

お金も使わず、電気も使わないこの遠心機。

発展途上国などインフラが整っていない地域の医療の助けになることが期待される。

まさにアイデアはどこに転がっているのかわからないということでしょう。論文も少し見てみましたが、びゅんびゅんゴマを科学的に分析し、どうやったら血液分離ツールとして使えるのか、真剣に検討されていました。ちらっと見るだけでもスゴイと感じられる論文なので是非ともみていただきたいと思います(無料ですし)。

A hand-powered centrifuge made of two paper discs, string and wooden handles is shown to achieve rotational speeds of 125,000 r.p.m., separate pure plasma from ...

近年では診断ツールも感度が良くなり、ほんの少しのサンプルさえあれば、診断ができるようになりました。つまりは今回のような少量のサンプルしか分離できなくても十分に検討できる土台は整っているというわけです。そういった様々な状況が整い、このような手法の開発につながった面もあるかと思います。

タイミングというのは研究にとって重要な要素の一つです。研究をしていく上で、周囲の状況をよく把握し、何が必要とされ、何を切り捨てることができるのか、そういったことを考えるのも重要なことなのかもしれません。

元記事はこちら(Inspired by a whirligig toy, Stanford bioengineers develop a 20-cent, hand-powered blood centrifuge)

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