植物の免疫反応を司るタンパク質SCN1の構造の一部が明らかに!作物の損失低減に期待?!

みなさんは作物が収穫前にどれくらいロスするかご存知ですか?種を蒔いた分すべてが育たなくても、ある程度育てばほとんど収穫までたどり着けると思うかもしれません。ですが、収穫前に病気になり損失してしまう分は15%もあると言われています。この損失量を少しでも減らすために、植物の免疫を基礎から解明しようという研究が進められています。

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植物の免疫応答

クイーンズランド大学の研究チームは、植物の免疫応答の詳細を明らかにしたと報告した。

植物が収穫前に病気になり、生産量の損失となる割合は毎年15%に及ぶと言われている。

しかしながら近年では農薬が環境に対して有害であるため、いかにして植物の免疫を向上させ、病気に打ち勝つのかということが一つの課題となっている。

これまで過去20年において、植物の抵抗性に関与する遺伝子は色々と見つかってきているのだが、その遺伝子産物がどのようにして機能しているのかということに関しては不明な点が多い。

タンパク質構造から知る免疫反応

研究チームは今回、X線結晶構造解析法と呼ばれる手法を用い、植物の免疫反応を司る受容体の一つSNC1(Suppressor of npr-1, constitutive 1)のTIR(Toll-IL-1 Receptor)と呼ばれる領域の構造を明らかにした。

この領域は免疫応答反応において、細胞内部で他の受容体と結合し、シグナルを次へ繋げる重要な役割をもつ領域である。

つまり植物の免疫反応を理解するために重要なタンパク質であるということだ。

地球上の人口の増加やバイオ燃料、繊維の需要の増加など植物への需要は拡大しており、作物の収穫量の損失は経済的にも社会的にも重要な課題となっている。

今回の結果がすぐに作物の収穫損失を抑えられるわけではないのだが、将来的に効率的に損失を抑えることに貢献するかもしれない。

タンパク質のX線結晶構造解析は基礎研究以外にも医薬品開発の分野で使われることが多い手法です。例えば抗インフルエンザ薬であるタミフルは、ノイラミニダーゼと呼ばれるインフルエンザウイルス表面に存在するタンパク質の構造が明らかになったことから、開発された薬剤です。つまりタンパク質の構造が明らかになることにより、そのタンパク質の機能を阻害したり、逆に活性化させることが可能になるかもしれないのです。

ではなぜタンパク質の設計図と呼ばれるDNAだけではそのような薬剤の開発はできないのでしょうか?実際DNAから得られる情報というのは、1次元の情報しか得られません。つまりDNA配列から最終産物であるタンパク質のアミノ酸配列は分かるのですが、そのタンパク質がどのような構造をしているかまでは分かりません。

ヒトで言えばタンパク質を構成するアミノ酸は20種類あり、もしアミノ酸10個からなるタンパク質があるとするとそのアミノ酸の並び方は2010種類もあるのです。そしてその中の一つのアミノ酸が他のものに変わることで構造が大きく変わってしまうことも多々あります。つまりは現状ではDNA配列からタンパク質の構造を正確に予想することはかなり困難なのです。

これまでにX線結晶構造解析は膨大な数のタンパク質の構造を明らかにしてきました。しかしこの手法はタンパク質を結晶化するステップが欠かせず、結晶化できないものに関しては後回しになっているのが現状です。もちろんこのような結晶化が難しいタンパク質が生体において重要な役割をすることも少なくありません。いかにしてこのようなタンパク質の構造を明らかにしていくのか、それが今後のタンパク質研究の大きな課題でしょう。

ですが我々の健康や社会にとって重要なタンパク質の構造が明らかになることにより、もしかしたら社会が一変するなんてこともあるかもしれません。今後のタンパク質の研究に期待したいものですね。

元記事はこちら(New study shows how plants fight off disease)

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