機能停止している遺伝子を巧みに用い、妊娠時の食事と胎児の成長の関連性を探る研究!

妊娠時に気を使うのは、その食事ではないでしょうか?母体が食べたものが、そのまま胎児に影響しますし、小さな胎児にとって、わずかな栄養の違いでも将来的に大きな違いを生み出す原因となりかねません。ですがその詳細においてはまだまだ分かっていないことも多いのが現状。新しい手法により、母体が摂取した食事と胎児の分化の関連性を探ろうという研究が進められています。

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母体が摂取した栄養と胎児の成長の関連性

インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、妊娠初期に母親が十分な栄養を摂取しなかった場合、胎児の健康を損ねる可能性を報告した。

母体が摂取した栄養と胎児の分化・成長に関しては、長い間研究者にとって興味深い研究であったのだが、これまではそのような実験を行うことは困難であった。

今回研究チームは遺伝子操作したマウスの胚を用い、栄養状態によってある遺伝子がON/OFFになるように細工し、可視化することに成功した。

Epigenetics:エピジェネティクス

このように外界環境と遺伝子の機能における関連性を調べる研究をエピジェネティクスという。

この研究分野は比較的新しく、各種生物のゲノム解読が進んだ2000年代以降研究が盛んになってきている。

今回の研究はエピジェネティクス研究の中でも、胎児の分化を可視化した初めての例となる。

研究チームは可視化するために、化合物と反応して発光するルシフェラーゼというタンパク質や化合物を分解し、発色させるタンパク質であるβ-ガラクトシダーゼというタンパク質を遺伝子上に組み込んだ。

目的遺伝子がONになることで発光したり、発色したりするというわけだ。

Imprinted genes:刷り込み遺伝子

そのターゲットとなった遺伝子は刷り込み遺伝子と呼ばれる遺伝子だ。

我々哺乳類は父親と母親の両方から同じ遺伝子を二つ受け継ぐが、いくつかの遺伝子のおいては片方の親から受け継いだ遺伝子のみが機能することが知られている。

つまりもう片方は普段機能停止した状態でいるのである。

一つの例としてはCdkn1cと呼ばれる遺伝子があり、この遺伝子は母親由来の遺伝子のみが機能する。

研究チームはこの刷り込み遺伝子のうち、普段機能停止している遺伝子にルシフェラーゼ遺伝子やβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を繋ぎ、食事や薬などにより活性化された際、発光や発色をするようにした。

遺伝子全体の0.4%

この刷り込み遺伝子はこれまでに100個ほど見つかっており、遺伝子の0.4%を占めていると言われている。

そしてその多くの遺伝子は妊娠時に受精卵が分化する際に大きな影響を与えていると考えられている。

その証拠に今回、研究チームはマウスを用い、妊娠時に低タンパク質食にした際の受精卵の遺伝子発現を解析し、妊娠時の食事と胎児のその後の健康に関連性があることを明らかとした。

これまで観測することが困難であった分化という現象。

新しい手法が開発されることにより、未知なる現象にどれだけ迫ることができるのか、今後の研究が期待される。

これだけ科学が発達した今でも分化・発達に関してはまだまだ謎が多い状況にあります。その原因の一つとしては、いつ受精したのか分からないという時間的なものから、分化段階の受精卵を母体から離してしまうと、正常な分化・発達が行われないという生物学的な課題の両方があるのではないでしょうか。

そしてその課題をクリアするために、リアルタイムにそして非侵襲的に観測ができるよう様々な研究ツールが急速に開発されてきています。近い将来、これまで謎だった分化・発達の基礎的な知見が集まり、より健康な子供を産むにはどうしたら良いのかという研究に進んで行くことでしょう。

今回のような遺伝子研究ツールの開発から人工知能のような解析ツールの発達が著しい現代。もしかしたらその解答にたどり着くのは、そう遠い未来ではないのかもしれません。

元記事はこちら(Mother’s diet in pregnancy may have lasting effects for offspring)

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