肥満とがんの発症において、関連性はあるのか?研究を行う難しさを反映。

日々新しい研究結果が報告され、製品の実用化や病気の治療など新しい世界を切り開くきっかけとなっています。ですが残念ながら、すべての研究結果を鵜呑みにしてはいけないようです。これまで報告された研究例を信用できるものか評価を行い、がんと肥満の関連性を明らかにしたという報告がなされました。

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肥満とがんの関連性はまだ明らかになっていない?!

インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、肥満と11種のがんが高い関連性があるという研究結果を報告した。

これまでの研究においても、肥満とがんの関連性は色々と取りざたされて来たのだが、確たる証拠を掴んだ例はなかった。

がんは世界でも1、2を争う死亡原因であり、肥満人口は過去40年間で2倍以上となっている。

そのため肥満ががんの発症リスクとなることが確実となれば、リスクを減らす対策が行えるため、重要なことである。

これまでの研究報告を解析

これまでに報告された肥満とがんの研究で何故確たる証拠とならなかったかというと、その研究戦略が十分ではなく、バイアス(偏り)が生じてしまう可能性が不定できなかったからである。

そのバイアスの影響をなくすため、研究チームはこれまでに報告された研究を網羅的に解析し、肥満とがんの関連性の確たる証拠をつかもうと分析を行った。

研究チームは49の研究報告に記載されている204のメタ解析(複数の研究結果から解析する統計学的手法)を抽出し、解析を行った。

それらの研究報告には、BMI、体重増加量、ウエスト周長などの肥満を判別する情報と、36種類のがんに関しての情報が記載されていた。

研究チームはまずこれらの研究報告がバイアスがかかっているものではないか、信用に足るものかの評価を行った。

過去の研究の信用性

その結果、95のメタ解析において、肥満の測定を継時的に行なっていたのだが、確固たる証拠として使うことができるものは、たったの13%しかなかった。

つまり研究の戦略として正しく評価できるよう意味のあるように実験系が組まれ、そして偏りがないと言えるものが、13%しかなかったというわけだ。

他には、確固たる証拠としては使用できないが、ほぼ間違いないものが18%、示唆できるもの25%、証拠としては弱いもの20%、そして全く証拠にならないものが25%であった。

肥満がどのようながんにつながるのか?

確固たる証拠として使用できるデータを紐解いてみると、BMIとがんの関連性に関しての研究であり、食堂がん、骨髄がん、男性において結腸がんと直腸がん、胆のう系のがん、すい臓がん、閉経前の女性の子宮内膜がん、そして腎臓がんである。

そしてBMIが5上昇する毎に、胆のう系のがんの発症リスクが56%上昇し、男性においては結腸がん、直腸がんの発症リスクが9%上昇することが明らかになった。

またホルモン療法を受けていない女性において、体重が5 kg増加毎に乳がんの発症リスクが11%上昇すること、そしてウエストとヒップの比率が0.1増加することに子宮内膜がんの発症リスクが21%増加することが判明した。

さらに関連性が強く示唆できる研究からは、体重増加により結腸直腸癌の発症リスクの上昇、BMIが増加することにより、胆嚢がん、胃噴門のがん、卵巣がんの発症リスクとメラノーマによる死亡リスクが上昇することが示唆されている。

つまり、食道がん、結腸がん、直腸がん、胆嚢がん、すい臓がん、子宮内膜がん、腎臓がん、乳がん、胃噴門のがん、卵巣がん、メラノーマの11種類のがんに対して、肥満とリスクが明らかになったというわけだ。

私がこのSIGで言いたいことの一例がこれです。私はことある毎にわたしを信用するな、SIGを信用するな、そして世に広まっているとしても報告された研究を信用するなと言ってきました。何故なのか、この研究が示してくれています。

今回の解析では204の実験解析例のうち、完全に信用できると彼らが評価したものはたった13%しかありません。そして実証するには弱すぎる証拠や全く証拠とならないものと評価したものは45%も、つまり少なくとも約半分は十分な証拠とは言えないのです。現代の科学はまだまだこのような不安定な土台の上に成り立っているものもあり、過信しすぎることは、いいことではないのです。

では何故研究者がそういった信用できない結果を報告するのか、そして何故それが論文として採用されるのかですが、例えば資金や機材的な制限、そしてその研究を行った時の技術では実験、解析しきれなかったという可能性が挙げられます。それでも報告することで少しでも科学の発展に寄与してきたわけで、そういった報告があったからこそ、今、確定的なことが言えるようになってきたのです。

研究だけではなく、インターネットでも、新聞やテレビのようなメディアでも同じことが言えます。本当に情報が正しいのか、それとも間違っているのか、取捨選択することが自分を守ることにつながります。そのような目を自分自身がもちたいと思いながら、読者のみなさんにももってもらいたいなと願うばかりです。

元記事はこちら(Strong evidence supports the association between obesity and 11 types of cancer)

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