新しい抗がん剤のターゲットは、細胞内の”ゴミ処理機”?!がん細胞を自滅させる薬剤の開発!

自分の細胞が変化して、無限に増殖を続けるがん細胞。そのがん細胞の増殖を止めるため、様々な薬剤が開発されています。今回、ある研究チームは、細胞内のごみ処理機能を止める薬剤を開発することで、抗がん剤への新しいアプローチを研究しています。

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タンパク質分解酵素を阻害する薬剤は抗がん剤になる?!

カルフォルニア工科大学とカルフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームは、タンパク質分解酵素であるプロテアソームに存在する Rpn11というタンパク質の機能を阻害する薬剤を開発し、その薬剤が抗がん剤として使える可能性があることを報告した。

その機構はなかなか複雑であるため、まずは細胞内で不要なタンパク質があること、そしてその不要なタンパク質を取り除く機構があることから説明したい。

いらないタンパク質を除去する機構

細胞の中では日々、たくさんのタンパク質が作られている。

しかしタンパク質はいわゆる”生もの”であり、時間が経つにつれ、機能を発揮できなくなる。

またタンパク質を作る過程では、これまたたくさんの遺伝子やタンパク質が働いているのだが、たまに失敗してしまい、機能を発揮できないタンパク質が作られることもある。

このようにいわゆる壊れて役に立たなくなったタンパク質が細胞内に蓄積されると、悪影響を及ぼしてしまう。

そのため、細胞にはこのようないらないタンパク質を分解し、アミノ酸に戻すことで再利用する機能が備わっている。

その一つの機能がプロテアソーム系と呼ばれるタンパク質分解経路である。

プロテアソーム

プロテアソームというのは、中空の円柱状のタンパク質複合体、つまりいくつかのタンパク質が合体しできているタンパク質構造物である。

細胞内では、いらなくなったタンパク質はユビキチンと呼ばれるタンパク質でタグ付けされ、このプロテアソームに運ばれる。

タンパク質は3次元構造をもっているのだが、もともとはアミノ酸でできた一本の紐である。

プロテアソームに不要なタンパク質が運ばれると、まずは3次元構造が解かれ、一本のアミノ酸の紐に戻される。

しかしながら、この不要タンパク質にはユビキチンが付いており、一本の紐のところどころに毛玉がついたような状態となってしまう。

そこでプロテアソームは、タンパク質を一本の紐に戻しつつ、ユビキチンを外すことを行う。

この際に重要なタンパク質が、Rpn11である。

がん細胞とは?

ここで説明をがん細胞に向けてみよう。

がん細胞はもともとは普通の細胞であるが、何らかの原因により、これまで従っていた細胞のルールに従わなくなってしまった細胞である。

そして好き勝手にタンパク質を大量に作り、増殖を続け、腫瘍を形成し、さらには他の場所に広がっていく。

つまり通常の細胞よりもたくさんのタンパク質を作っているのだが、より多くのタンパク質を作れば、より多くの失敗作が生まれる。

そのままでは失敗作のタンパク質に埋もれ、がん細胞は死んでしまうわけだ。

しかしそうはならない。

がん細胞は先ほどのプロテアソーム系を上手に使い、失敗作を除去しているのである。

がん細胞を自滅させる!通常の細胞への影響は軽微?

そこで研究チームが考えたのは、その失敗作を分解する機構をストップすることにより、がんを自滅させようということだ。

その際に注目したのが、ユビキチンというタグを外すRpn11というタンパク質だ。

ユビキチンが不要タンパク質から取り除けなくなると、途中で不要タンパク質の分解が止まってしまい、細胞内に蓄積し、最終的には細胞はそのストレスで死んでしまう。

これが彼らが考えた抗がん剤のシステムだ。

しかし、この不要タンパク質を除去する機構は普通の細胞においても重要である。

彼らが開発した薬剤が普通の細胞にも悪影響を及ぼしてしまう可能性は否定できないのだが、がん細胞は普通の細胞よりも多くのタンパク質を作っており、そのため失敗作も多い。

つまりがん細胞の方がよりこの薬剤に対する感受性が高いのである。

今回、彼らはヒトの細胞を用いて、新しい薬剤ががんを死滅させることを示したのだが、抗がん剤として実際の医療現場で使われるためには、さらなる研究や検討が必要であるとしている。

抗がん剤を開発する上で重要なのは、普通の細胞とがん細胞をどうやって区別するかということでしょう。がん細胞ももともと普通の細胞であり、がん細胞に効く薬剤は、普通の細胞にも影響を及ぼしてしまうため、副作用が大きいのが現状です。

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今回の研究では、がん細胞が普通の細胞に比べ、たくさんのタンパク質を作っていることに注目し、そこで区別しようという試みです。記事内にもあったように普通の細胞に与える影響はないとは言えないのですが、薬剤が開発されるにつれ、その副作用がより軽度にできる可能性があることでしょう。またドラッグデリバリーシステムと組み合わせれば、ほとんど副作用がない薬剤もできるのかもしれません。今後どのような方向に開発が進められるのか、興味深い研究だと思います。

元記事はこちら(New Cancer Drug Targets Cellular Garbage Disposal)

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