微生物を拡散させる原因は雨?そのメカニズムの解明と公衆衛生との関連性とは?

我々にとって、綺麗な水を供給し、農業や生活に必要な雨。その雨は微生物にとっても、新たな地へと旅立つために必要なものかもしれません。しかしそれは同時に人間にとっては、有害な微生物が広がる可能性を高めているかもしれないということが、最新の研究により明らかになりました。

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雨が微生物を拡散させる?!

マサチューセッツ工科大学の研究チームは、小雨により土壌中の微生物が飛散し、広がることを報告した。

研究チームはこれまで雨がどのようにしてエアロゾル(霧や水蒸気のような細かい水滴)を生み出すのか研究を行ってきた。

そして2015年に研究結果を報告し、雨が地上に接触すると、小さな気泡を水滴の内部に取り込み、そして浮かび、あるところで破裂することで、小さな水滴を空気中に拡散させるというメカニズムを提唱した。

その研究結果が論文として配信されると、研究チームはイギリスの研究チームから、そのメカニズムにより微生物が飛散されるのではないかと連絡を受けた。

その連絡では特に東南アジアやオーストラリアの土壌に生息し、感染すると肺炎や腫瘍を形成したり、敗血症を引き起こすBurkholderia pseudomalleiと呼ばれる微生物を飛散させる原因ではないかという内容だった。

土と雨と温度

そこで研究チームは、彼らが提唱している雨からエアロゾルを形成するメカニズムにより、土壌中の微生物が拡散されるかどうかを検討した。

彼らは三種類の土壌中に生息する非感染性の微生物と6種類の土壌条件(乾燥した土、砂、粘土質、砂地を含む粘土質など)で検討を行った。

その結果、土によりはね上げられた水滴は、土壌の温度により、跳ね上がる高さ、そして破裂する高さが変化することを明らかとした。

そして土壌の温度が30℃を超え、土壌が砂地を含む粘土質の条件となると、他の条件よりも多くのエアロゾルが生み出されることが明らかとなった。

この条件というのは、南国の熱帯地方と類似した条件である。

さらに雨の条件としては、その落下速度が1.4メートル/秒から1.7メートル/秒、つまり小雨の条件において、より多くのエアロゾルが生み出された。

そして微生物

次なる問題は、その水滴の中に微生物が含まれ、拡散されているかということである。

そこで研究チームは、実験により飛散させた水滴を一つ一つ採取し、培養し、微生物が含まれているかを検討した。

その結果、土壌の性質、土壌に含まれる微生物の数、土壌温度、そして雨が落ちる速度などの条件により、飛散する微生物の数が0から数千まで変化することを突き止めた。

つまり他の研究チームから受け取った雨により土壌中の微生物は飛散するという考えは正しかったのである。

さらに研究チームは今回の研究結果から、年間どれくらいの量の微生物が世界中で飛散しているのかの試算を行っている。

その試算では、年間10,000兆から800,000兆個の微生物が雨により土壌から飛散し、その量は土壌に生息する微生物の1.6%から25%ではないかと考えられる。

雨は落下中に空気中の小さなゴミ、微生物、ウイルスを取り込み、地上に落とすもの、つまり雨が降った後の空気は綺麗なものになると考えられています。それは間違いではないのでしょうが、地表を見てみると、実はゴミ、微生物、ウイルスとかは面積的には広がっているということが今回の研究結果から言えるのではないでしょうか。

これは我々の生活にとって重大な研究結果で、例えば病気の感染予防や農薬散布など感染性病原体をいつ抑え込むのかとう公衆衛生を再度考える必要がでてくるのではないかと思います。例えば農薬散布は、確かに病原体が飛散する前に除去するという目的からある程度晴れた日が続いた後に散布する方がよいということになるかもしれませんし、雨が降った次の日は病気の感染を防ぐために、マスクをした方が良いということになるかもしれません。

今回のように自然現象のメカニズムを解明することは、もしかしたら我々の生活を変える大きな原動力になる可能性があります。今回の研究は雨によるエアロゾルがどうやって広まるかという一見何故そんな研究をしているか分からないかもしれません。しかし最終的に公衆衛生という大きな課題まで発展しそうなことから、原理原則を突き止めるということの重要性、そして他の研究との関連性を考えることの重要性を示してくれている研究なのではないでしょうか。

元記事はこちら(A light rain can spread soil bacteria far and wide, study finds. Global precipitation may account for 1 to 25 percent of bacteria emitted from land.)

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