DNAとタンパク質を組み合わせることにより、細胞内で自由自在に複雑なナノ構造を作り出す手法の開発!

我々の技術は現在、ナノの領域まで来ています。ですがナノ構造を自由自在に作れるかというとまだまだ困難なこともあり、さらには時間やコストが大幅にかかってしまいます。そこでバイオ研究者が考えているのは、ナノの構造を細胞に作らせてしまおうということです。しかも設計図を入れるだけで、複雑な構造が勝手に組み上がる、まるで魔法のような技術を構築しようとしています。

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DNAとタンパク質のハイブリッド構造

ミュンヘン工科大学の研究チームは、DNAとタンパク質を使い、新しい機能をもった構造体を開発しようと研究を行なっている。

DNA(核酸)とは遺伝子を構成する物質の総称であり、アデニン、シトシン、チミン、グアニンの4種類のことを指す。

通常これらの物質がある順番で並ぶことで意味のある配列となり、遺伝子を構成し、タンパク質の設計図として使われたり、そのタンパク質の合成量を規定していたりする。

しかしながら近年、このDNAを用いて、遺伝情報としてではなく、触媒(化学反応を進みやすくする物質)やナノ構造体として用いる研究が行われている。

この技術は折り紙を折ることに例え”DNA origami”と名付けられている。

DNA origamiに関してはSIGでも紹介をしている。

DNAを折り紙のように使い、様々な形を作り出す技術
目に見えないほど小さい折り紙で、一体何を作るのか?! 遺伝情報DNA 全ての生物はDNAと呼ばれる物質からなる遺伝情報をもっている。こ...

DNA origamiのデメリット

しかし開発が行われているDNA origamiにおいては、現在のところデメリットが存在する。

それは細胞の外でDNAを連結し、複雑な構造を作り出すということである。

現在のところDNA origamiでは、細胞の中でDNAを連結し、自在に構造体を作り出すまでには至っていない。

また化学合成により連結したDNAを得る手法はあり、現在ではかなり安価になっているのだが、長くなるにつれ合成が困難になり、また配列に関しても制限が存在する。

つまり我々にとっては小さなサイズだが、タンパク質にとっては大きなサイズである10 nmから100 nmといったサイズのDNA構造体を作り出すのは依然として難しいのである。

TALエフェクタータンパク質

そこで研究チームは、DNAだけでなくタンパク質も使うことで、細胞の中で複雑な構造を作ろうと考えた。

そこで用いられたタンパク質がTALエフェクターと呼ばれるタンパク質である。

TALエフェクターは自然界においてある種の植物に感染する微生物が作り出すタンパク質であり、植物のDNAの特定の配列に結合することができる。

今回の技術とは異なるが、TALエフェクターはヌクレアーゼと呼ばれるDNA分解酵素と融合させることで、CRSPER-CAS9とは異なるTALEN(TAL Effector Nuclease)と呼ばれるゲノム編集技術として用いられている。

研究チームは一つのDNA配列に対し、複数結合できるように多種多様なTALエフェクタータンパク質を作り出した。

またDNAとタンパク質のハイブリッド構造を作り出すために、もう一つ必要なものがある。

それはもちろんDNAの配列をデザインすることである。

DNA配列により作られる一般的な構造は、2本のDNA配列が縒りあわさった1本の糸のような構造である。

しかしながら配列によっては、1本のDNA配列でループ構造を作ったり、3本のDNA配列が集まり、分岐を作るなど少しだけ複雑な構造を作ることができる。

ルールを見つけ出し、次のステップへ!

現在、研究チームは作り出した様々なTALエフェクタータンパク質とDNA配列によりどんな複雑な構造が作れるかを検討している。

そしてその先にあるものは、これらを足場とし、さらに高機能なタンパク質複合体を作り出すところにある。

TALエフェクタータンパク質は、もちろんのごとく遺伝子が設計図となっている。

そこでその設計図にTALエフェクタータンパク質に続いて、酵素などの機能性タンパク質が合成されるように書き換えることで、足場と機能が融合したタンパク質を手に入れることができる。

そしてこの融合タンパク質(TALエフェクタータンパク質+機能性タンパク質)は、DNA配列の特定の場所に結合するため、自由自在に配置することが可能となるのだ。

問題はこのDNA配列と融合タンパク質をどのようにして作り出すかということだが、もちろん人間の手で化学合成することは、かなり困難である。

しかしながら細胞や微生物にとってはDNA配列をコピーしたり、タンパク質を作り出すことは日常行なっている簡単な作業である。

一つの細胞の中にデザインしたDNA配列と融合タンパク質の遺伝子を導入してやれば、あとは勝手にそれぞれを作り出してくれるというわけだ。

作り出されたDNA配列と融合タンパク質は、我々が設計した通りに自動で組み上がってくれるのである。

このようなシステムを構築できれば、もちろん基礎研究においても大きく貢献すると考えられるが、さらには安く豊富にある物質を連続的に反応させ、薬などの高価な物質を作り出したり、バイオエタノールのような需要が大量にある物質を効率的に作り出せるようになることだろう。

現在、半導体業界などナノテクノロジーの分野では、溝構造やホール構造など平面の構造においてはかなり自由自在に扱えるようになってきています。そして2次元の構造が自由にできれば、今度は3次元と考えるのは自然なことですが、その3次元構造を作り出すのは、2次元構造を作り出すよりもはるかに高いハードルがあるように思えます。

そのハードルはナノ構造を作り出す手法によるところが大きいでしょう。現在のナノテクノロジーでは、原子レベルの物質を飛ばし、ナノレベルの薄膜を作ることはそれほど難しくはありません。その薄膜にナノ構造を作るには光で硬化する樹脂で削らないところを保護してから全体を削り、最後に樹脂を取り除くといった手法でナノ構造を作ったりしています。

つまり光を用いているため、面方向の構造を作るのは容易なのですが、ナノの厚さしかない厚さ方向の構造を作るのは容易ではないのです。このような方法はトップダウンと呼ばれますが、今回の研究のようにより小さなものから組み上げていく方法をボトムアップといい、次世代のナノ構造を作る手法として注目されています。そしてこのような3次元ナノ構造を作ることができれば、2次元ナノ構造よりも飛躍的に性能はアップすると考えられます。3次元ナノ構造をもった製品が出てくるのはいつになるのかまだまだ分かりませんが、どれだけ性能アップした製品が生み出されるのか、今から楽しみですね。

元記事はこちら

Florian Praetorius and Prof. Hendrik Dietz of the Technical University of Munich (TUM) have developed a new method that can be used to construct custom hybrid s...

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