卵巣がんのリスク要因となる新たな12個の遺伝子を同定。しかしそれはまだ一部でしかない?!

遺伝的にがんになりやすい人がいるということは、現在の研究では明らかになっています。しかしながら問題なのは、どのような遺伝子をもっているとがんになりやすいのかということです。これまでにがんに関連すると言われる遺伝子は多数見つかっているのですが、それはまだまだ氷山の一角。がんのリスクとなり得る遺伝子を全て同定するには時間がかかりそうです。

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子宮がんに関わる遺伝子の大規模解析

ニューサウスウェールズ大学を含む国際的な共同研究チームは、卵巣がんに関わる遺伝子を新たに12個同定したと報告した。

オーストラリアでは2017年に新たに卵巣がんと診断された人は約1,600人おり、また亡くなった方は約1,050人いたと推計されている。

そして卵巣がんだと診断された人のうち、5年後に生存する人の率は44%だと言われている。

今回、アメリカのthe Ovarian Cancer Association Consortiumとオーストラリアのthe Consortium of Investigators of Modifiers of BRCA1/2の双方から総勢418人の研究者が卵巣がんに関連する遺伝子を同定するため、大規模な遺伝子解析を行なった。

BRCA:BReast CAncer susceptibility gene

BRCAとは乳がん感受性遺伝子といい、がんを抑制する遺伝子のことである。

そしてこの遺伝子に変異が生じると乳がんや卵巣がんの発生率が高まると言われている。

このBRCA遺伝子は4つの類似した遺伝子が見つかっており、BRCA1、BRCA2、BRCA3、BRCA4と数字を振り、名付けられている。

この中でも特にBRCA1とBRCA2の遺伝子において変異が、がんの遺伝的リスクの約40%を占めると言われている。

しかし、残りの60%のがんの遺伝的リスクがどのようなものかは十分な解析が行われていなかった。

100,000人の遺伝子から、新たに12個の遺伝的がんのリスク要因を同定

今回、研究チームは健康な人と一般的なタイプの卵巣がんの患者、約100,000人の遺伝子を集め、解析を行なった。

そしてこれまでにBRCA1とBRCA2以外に報告された18の遺伝子変異がやはりがんの発症リスクを高めるということを確認し、さらに新しく12の遺伝子変異が女性においてがんのリスクを増大させることを明らかとした。

この30個の遺伝子のによる卵巣がんのリスクは全体の6.5%だと推測されている。

BRCA1とBRCA2だけで40%の卵巣がんのリスクであるにしては、今回確認された、もしくは同定された30個の遺伝子の割合はわずかなものである。

そしてそれが示すものは、まだまだ小さなリスク要因となる遺伝子がたくさん存在しているということである。

リスクの割合が小さくなれば、それだけその要因により子宮がんを発症する人の割合は少なくなり、同定が困難となる。

しかしながら、このような大規模で、地道な研究を続けることにより、子宮がんの遺伝的要因が明らかになる日もくるのではないだろうか。

SIGでもこんな遺伝子ががんに関係している、今度はこの遺伝子が…なんてがんに関連する遺伝子についてはいくつも記事を紹介しています。ですが今回の研究であるように、一つの遺伝子だけが特定のがんに関わっているということはなく、複雑な状況を作り出しています。

なぜそのようなことが起こるのでしょうか?もちろん病気の中には、一つの遺伝子の変異が一つの病気を引き起こすという1対1の関係になっているものも存在します。しかし、がんというのは細胞の増殖のリミッターが外された状態であるということが深く関係していそうです。

生命はその生存に重要な遺伝子に関しては、なるべく複数もつようにしているのではないかと考えられます。つまり何らかの原因でメインの方法が使えなくなった場合に備え、サブの方法をいくつも準備しているのです。そうしておけば、多少サブの機能はメインの機能に劣るとしても、生きて行くことは可能な状態を維持できる可能性が高まるからです。

ですが、がんにとってはそれは好都合なのかもしれません。もともと細胞は無限に増殖できないように、リミットがかけられています。そのリミットが外れた場合に、がんになると考えると、がんはいくつも準備されている方法のうち、どれか一つのリミットを外すことができれば、無限に増殖することができてしまうというわけです。

近年では大規模な遺伝子解析を行う時間的、そして金銭的コストが下がり、多くの研究室が取り入れるようになってきています。もちろんさらに遺伝子解析のコストが下がるよう研究が続けられており、実際にまだまだ下降傾向にあるようです。もし大規模な遺伝子解析のコストが全人類の遺伝子を解析するまで下がったとしたら、生まれた時には病気のリスクが明らかになり、さらにはオーダーメイド治療まで用意されているなんて世の中になるのかもしれません。

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