【オピニオン】弱小ブログが巨大情報サイトWiredの記事に反論してみる〜人工肉に関して〜

先日、人工肉に関して、Shojinmeat Projectを取り上げた。ちょうどそのとき、Wiredが同じように人工肉の記事を掲載していた。

そのWiredの記事はバイオの研究者として、「ん?」と思ったので反論したいと思う。

SIGの記事はこちら

命を殺さず、命を紡ぐプロジェクト!人工肉で食糧問題、環境問題を解決し、果ては宇宙開発まで!〜Shojinmeat Project〜
細胞から肉を作る?!バイオの技術はここまで進んだ!しかしなぜ人工的に肉を作る必要があるのでしょうか?食肉と健康 世界中で日々大量に食...

Wiredの記事はこちら

食肉業界の問題を解決しうる「人工肉」。まだ知名度も低く価格も高いが、いずれ価格が下がれば普及することは間違いないだろう。人工肉に関するいくつかの世論調査を紹介。

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最初に…

最初に断っておくが、私は人工肉の研究を行っている人々とは、全く利益関係にはない。

単に人工肉に興味をもっているバイオの研究者の一人である。

バイオの研究者として、どうしても今回のWiredの記事は反論したいと思った。

SIGの運営ポリシーとしては、最先端の研究を広め、多くの人に「研究って面白いな!」「こんな技術が出来たら、こういうこともできるんじゃない?」なんて出来る限り正しい知識をもってもらい、イノベーションを加速させることだ。

もちろん自分自身も記事を書くことを通じて、イノベーションにつながるネタを見つけたいと思っている。

だからこそ記事にする研究に関しては、批判をするためではなく、「誰かのためになる」とか「面白いな!」と思ったものを書く。

研究者は誰もがほんのちょっとでも「真理を解き明かす」だったり、「誰かの役にたつ」と思って一生懸命研究している。

だが新しい研究に対して批判だけが広がれば、それがどんなにいい技術だったとしても、簡単に芽が摘まれてしまう。

研究段階で、まだ確立していない技術に対して、芽を摘むようなことをしていいのか?

そんな思いでこの記事を書いている。

反論1:まずはタイトル

「人工肉」は普及する。たとえあなたがそれを嫌っても

引用:2016/7/26 Wired

これは、なかなか挑戦的なタイトルだ。

このタイトルだけを見ると、ほとんどの人が人工肉を食べたく無いと思っていると捉えられかねない。

人工肉に関しては、現在研究段階にあり、まだまだ普及は先であり、一般の方にとっては馴染みのない言葉であろう。

そして記事中には、アンケート調査の結果が書かれている。

180人のベルギー人を対象にして人工肉に関するアンケート調査が行われている。

この調査で、人工肉とは何かを知っていたのはわずか13パーセント。

引用:2016/7/26 Wired

知らない人にとって、好きも嫌いもあったものじゃない。

逆に試したこと無い食べ物に対して、人が試してみたいという人がいることは、この技術への期待の表れだろう。

実際SIGでも培養肉の話題を取り上げた時、食べてみたいという人は一定数見られたし、さらには食べたくないという人もいた。

どうやって作ったのか、何故必要なのかをしっかりと説明すれば、全員にとは言わないが、多くの人に受け入れられる技術なのだ。

ことことは人工肉に関して、一般の人はまだ知識をもっておらず、研究者サイドとしても、またメディアとしてもしっかり説明していないということになる。

まずは人工肉を広める広めないを別として、批判では無い、事実に基づいた説明をすべきだろう。

反論2:ヴェジタリアン、ヴィーガンの調査

ブログ『The Vegan Scholar』が行った非公式の世論調査では、人工肉を好ましく思うのは、ヴィーガン(完全菜食主義者)よりもヴェジタリアンの方が多い。

引用:2016/7/26 Wired

ヴェジタリアンだろうが、ヴィーガンだろうが、肉食主義だろうが、それは個人の生き方の問題であり、誰かが口を挟むことでは無い。

宗教的なことで肉を食べない人もいるだろうし、体質的なことで食べない人もいるし、家庭でこれまで食べてなかったという人もいるだろう。

そして、もちろん動物を食べるということに対して、反感を覚える人もいるだろう。

そういったバックグラウンドを無視して、ひとまとめにこういう人たちは食べたくないと言っているというのは、あまりにおかしい。

そしてすべての人に受け入れられなければ、技術として広まらないのであれば、どんな技術も広まらない。

現に世界中に広まっているスマートフォンだってもちたい人はもっているし、もちたくない人はもっていない。

選択できる幅が広がる。それでいいではないか。

反論3:価格に関して

現状の価格より1,000倍も高価な人工肉バーガーを選ぶ理由はないのだ。

引用:2016/7/26 Wired

価格が下がるまで人工肉に切り替える必要がないのは、その通りでもあり、そうでない点でもある。

例えば、エコ製品だって、安くてエコじゃない製品を買う人だっているだろうし、高くてもエコな製品を選ぶ人だっている。

値段が1,000倍も違えば、人工肉に切り替える必要がないというのは確かに多くの人が思うだろう。

人工肉はまだ売り出しているわけではなく、何度も言うが研究段階であり、誰も買えない状況だ。

売っている人がいない限り、商品となった時の値段は誰もわからないのだ。

そしてもし製造コストより安い金額で売ったからといって、企業選択としてありという状況だってある。

研究段階でかかるコストをあたかも販売価格のように伝えるのはおかしいのではないだろうか?

だが価格に関しては、Gizmodeが2015年10月に掲載した記事のなかで、人工肉バーガーの価格は下がっていると記載されている。

今では、1つ11ドル(約1300円)と劇的にダウンしています。

引用:2015/10/21 Gizmode

この価格もどう算出したのかはわからないので何とも言えないが、Wiredの記事において価格に関しては、ソースが書かれていないので、何にせよ情報収集不足な感がある。

(Gizmodeの記事ではソースはBBCとはっきり書かれている)

さらに記事冒頭にはハンバーガー1つ作るのに33万ドル(約3,500万円)書かれており、これの1,000分の1なら35,000円だ。

えらく高いハンバーガーを食べていることになる。

反論4:味に関して

問題は、まだ味がそれほどおいしくないこと

引用:2016/7/26 Wired

肉に関して言えば、脂がある方が美味しいと感じる人が多いだろう。

だからこそある程度脂をいれて、美味しさを引き出す研究もされている。

人工肉のいいところの一つは、前の記事でも書いたが、色々組み合わせることで、味や栄養を変えられることだ。

そして、市場には良いか悪いかは別として、成型肉のように脂を入れて売られている肉もある。

昔から成型肉はあるので、そこそこ売れれているのだろう。

そういう意味では、味に関しての技術は現在でもある程度あり、それを人工肉に合わせていくということも十分に可能だと推測できる。

反論5:最後に…

人工肉に取り組んでいる科学者たちは、生産効率が上がることで2020年までに価格を下げて味をよくすることができる、と楽観的に考えている。

引用:2016/7/26 Wired

何が楽観的なんだろうか?

2020年までにというのであれば、あと4年しかないので楽観的なのかもしれない。

だがそれはやっている研究者やそれに関与している人しか分からないだろう。

どんなロードマップを描き、どんなスピードで研究が進んでいるのか、周りからは知る由も無い。

生産効率を上げ、価格を下げて、味をよくすることが楽観的だというのであれば、味に関しては前に述べた通り、どんどん改善していくことだろう。

価格に関しては、人工肉の培養に限らず、他の細胞の培養に関しても、年々効率は上がっている。

iPS細胞で皮膚を作る研究だってあるし、臓器を作ろうとしている研究だってある。

様々な研究所において、培養液の開発、細胞を育てる基材(足場)の開発などが着実に行われているのだ。

こういった背景を見ても、いつになるかは分からないが、価格が劇的に下がることも十分に考えられる。

人工肉を作ることは技術的に可能だと示されたところで、現在商業化に向けて研究開発が進んでいる段階である。

そして様々な可能性を秘めている技術である。

だからこそ今、将来の可能性を失って欲しく無いし、携わっている研究者には頑張って欲しいと願っている。

今回は、初めて反論記事を書いてみました。バイオの研究者として、普段「遺伝子組み換え技術」がどうしても「悪」として捉えられている風潮にちょっと嫌気がさしていて、そんな時に、今回のWiredの記事を読んで、どうしても「これじゃいかん!」と思ったのがきっかけです。

遺伝子組み換え技術に関しては、また今度書きたいと思いますが、やはり記事中にも書いた通り、最新の技術に関しては説明が足りていないのだと感じています。そして、こうやって小さな個人ブログですが、ニュースを発信する立場となり、情報を正確に伝えるということは難しいなとも同時に思っています。

一体どうしたら、正確な情報をより多くの人に伝えられるか、それがSIGの一つの課題だといえるでしょう。