タンパク質をモジュール化することで、コンピュータ上で新しいタンパク質をデザインできるようになるかもしれない?!

酵素やクモの糸など耳にすることが増えてきたタンパク質。タンパク質が機能するにはその構造がとても重要です。ですがあまりに複雑すぎて、現在の知識では人間が1からデザインすることはできません。タンパク質をモジュール化することで、もっと簡単にデザインできるようにし、新しいタンパク質を生み出すという研究が進められています。

スポンサーリンク

素材としてのタンパク質

我々の体の中でタンパク質は微細な部品として働き、様々な生命現象を支えている。

例えば外から摂取した栄養を代謝し、必要な物質を作りだしているのもタンパク質であれば、それを使い他の物質を輸送するのも、そして生命の設計図である遺伝子を作りだしているのも全てタンパク質が行っている。

現在、このタンパク質たちを人間が工業的にうまく利用しようという動きが広まっている。

例えば、糖尿病の治療で使われるタンパク質 インシュリンは工業的に作り出せるようになっており、また近年では、タンパク質でできていながらも世界でも有数の強度を誇るクモの糸を大量に作り出し、繊維として利用しようという動きもある。

またそれ以外にも、自然界にあるタンパク質を組み合わせ、新しい機能をもったタンパク質を作り出すという研究も行われている。

例えば、先ほどのクモの糸に蛍光色を発するタンパク質を融合し、蛍光色を発する糸なども作られている。

だがこの手法には制約も存在する。

お互い融合する際には、末端でしか融合することができず、自由度が制限されているのだ。

自然界にないタンパク質を作り出す!

インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームはこの制約を受けず、新しい機能をもったタンパク質を作り出す方法を開発している。

彼らが検討しているのは、短いタンパク質を繰り返すことで得られる安定な構造をベースとし、そこにモジュールとして機能がわかっているタンパク質を付け加えようというものだ。

この設計はコンピュータ上で行われ、自由にタンパク質モジュールを組み合わせることができる。

そしてこの方法であれば、これまで見つかっていない、もしくは地球上に存在しないタンパク質であろうが、新たに作り出せる可能性がある。

デザインされたタンパク質は、生命の設計図である遺伝子に変換され、大腸菌や植物、ヒト細胞などの生物を用いて合成することが可能だ。

もちろん生物体内で合成される際、うまく合成することができない場合もあるが、X線結晶構造解析法という手法を用いれば、原子レベルでの構造を確認でき、望む構造体ができているか調べることができる。

デザイナーズタンパク質

この手法の利点というのは、新しいタンパク質を作る際、現在存在していないタンパク質を作り出せるというだけではない。

タンパク質は複雑な構造をしており、1からデザインしようとすると、現在の知識では十分ではなく、ほぼ成功することはない。

だが今回の手法のように、モジュールを組み合わせるという手法であれば、期待した通りの性質のタンパク質が得られる可能性が飛躍的に高くなる。

現在のところ、このコンセプトが有用であるということを実証した段階だが、今後モジュールを増やしていき、様々な機能をもったタンパク質を合成できるようになれば、タンパク質が素材として使われる場面も増えることだろう。

タンパク質を素材として扱うという研究は色々と行われていますが、複雑で大きなタンパク質になればなるほど、その難易度は向上します。そのためこれまでは小さなタンパク質、特にアミノ酸が十数個といったレベルでの研究が主でした。大きなそして複雑なタンパク質がデザインできるようになると、タンパク質が利用出来る場面というのが多くなると考えられます。

また化学的手法と異なり、特殊な薬剤や手間が必要なくなり、大腸菌を育て、タンパク質を生成するという非常に簡便な方法で高機能のものが得られるということになり、環境負荷的に見ても、コスト的に見ても大きなアドバンテージを生み出せる可能性があります。今後どのような場面にタンパク質が利用されていくのか、非常に楽しみな分野ですね!

元記事はこちら(A new way to create synthetic proteins could lead to more flexible designs)

この記事を読んだくれたあなたへひろやんからのオススメ記事

遺伝子を次々に反転・削除するタンパク質を用い微生物に”記録”機能を追加する?!〜Recombinase-based switch〜
遺伝子操作が可能にした次の技術は、微生物に”記憶”させること?!まるでコンピュータのように利用できるようになった微生物センサーの仕組みとは? ...
光応答タンパク質の動きを捉えた研究〜毎秒25兆枚の撮影〜
ヒトの中に存在する極小の部品 タンパク質の動きまで見えてきた!最新の研究は、ここまで進んでいます!ヒトの部品となるタンパク質 全ての...