診断・治療が困難なミトコンドリア病に関連する二つの遺伝子を同定!

我々の身体の中でエネルギーを作り続けてくれるミトコンドリア。古くは一個の生命体でしたが、他の生命体に取り込まれ、細胞内の器官の一つとなったと言われています。そのミトコンドリアに異常があると致死的なものから体質的なものまで様々な症状が現れます。ただあまりに広範過ぎて、診断も治療も難しいようです。その状況を打破できるかもしれない研究結果が報告されました。

スポンサーリンク

ミトコンドリア病

ミトコンドリアは全身の細胞に存在し、細胞内のエネルギーを作り出す細胞内小器官である。

細胞では外から摂取した糖を化学的に変換し、ピルビン酸という物質を作りだし、ミトコンドリアに受け渡す。

この反応を解糖系と呼ぶ。

ピルビン酸を生成する過程で生体のエネルギーであるATPは合成されるが、ミトコンドリア内ではクエン酸回路という物質の代謝経路により、他の生体エネルギーであるNADHを生み出す。

また脂肪酸を分解するβ酸化という反応も起こり、この反応ではATPを作り出す。

ミトコンドリアは細胞の遺伝子とは別に独自の遺伝子をもっており、分裂増殖をする。

もしミトコンドリアの遺伝子に何らかの欠陥があると、ミトコンドリアの機能が低下し、ミトコンドリア病を発症する。

ミトコンドリア病の症状は、ミトコンドリアの機能が低下する細胞や部位によって異なるが、エネルギー需要の多い、脳、骨格筋、心筋に異常が出ることが多く、けいれん、脳卒中、精神症状、発達の遅れ、物が見えにくい、音が聞こえない、運動ができない、疲れやすいなど様々な症状が見られる。

ただ、まだまだ不明な点も多く一部のミトコンドリア病は遺伝子の異常でない場合もあるが、大部分は細胞の遺伝子かミトコンドリアの遺伝子に異常があることが分かっている。

Complex I:複合体I

モナシュ大学の研究チームが、ミトコンドリア病に関係する二つの遺伝子を同定した。

この研究結果により病気の遺伝子診断や治療に役立てられる可能性があるという。

彼らが注目したのはミトコンドリアにあるエネルギーを作り出す最初のステップで用いられるタンパク質複合体だ。

名前は複合体I(Complex I)と呼ばれる。

この複合体Iは微生物からヒトまで広く見られるが、微生物では14個程度のタンパク質からできているが、ヒトでは46個程度と複合体を構成するタンパク質の量が30個程多い。

同じ働きをするタンパク質複合体なのに、なぜこれほど違いが出るのかというのは、これまで謎であった。

だが彼らの研究では、この余分の30個が人間の健康に重要なのだという。

ゲノム編集による実験

研究チームはこの余分の30個がミトコンドリア内でどのような機能をしているのかを調べるために、最新の遺伝子操作技術であるゲノム編集を用い、それぞれの遺伝子を取り除いた。

その結果、この30個の遺伝子は複合体Iを安定的に存在させるために必要であることが示唆された。

ヒトではなぜこの複合体Iを安定的に存在させる必要があるのだろうか?

それは細胞分裂の速さに起因する。

微生物はヒトの細胞よりも増殖速度が速く、20分程度で分裂する。

言い換えるとヒトの細胞では、微生物よりも長く生きなければならないため、エネルギーを作り出す複合体Iの安定性が重要になるのだと考えられる。

二つの遺伝子

研究チームは、ゲノム編集による実験をさらに進め、欠損させるとミトコンドリアの機能を破壊してしまう二つの遺伝子を同定した。

破壊されるとミトコンドリアが機能しないということは、それだけ重要な遺伝子であることを示唆している。

そしてミトコンドリアが機能しなくなるということは、ミトコンドリア病の原因となると考えられる。

現代の技術では、診断も治療も困難であるミトコンドリア病。

関連する遺伝子やメカニズムが解明されることにより、診断・治療への道が開けると期待される。

タンパク質は一つだけで作用することもあるのですが、多くの場合はタンパク質同士がくっついたり離れたりすることで、機能を発揮しています。そのため、その複合体の安定性が変化すると病気になってしまうということがあるわけです。今回のように複合体の安定性が病気を引き起こすことがわかれば、今度は薬で理想的な状態を安定化させるよう開発が進みます。もちろんまだまだ長い道のりがあるわけですが、まずは最初の一歩が明らかになることにより、その開発は急速に進むことでしょう。

元記事はこちら(Unravelling the genetic mystery behind mitochondrial disease)

この記事を読んでくれたあなたへひろやんからのオススメ記事

健康で長生きするための遺伝子スイッチの発見?!鍵はミトコンドリアにあり!
健康と長寿。それは人類共通の夢。そんな夢を叶える遺伝子スイッチ見つかる?!代謝と寿命 カルフォルニア大学バークレー校とスイス連邦工科...
眼底検査によりパーキンソン病が診断できる?!これまで行われている検査の見方を変えると様々な病気を予防できるかもしれない!
パーキンソン病やアルツハイマー病などの脳の神経が破壊され起こる病気は、眼底検査により網膜の状態をチェックすることにより診断できるかもしれない?!新...