五炭糖をエタノール生産に用いることにより、これまでよりも倍の生産量が期待できる酵母の開発!

食品としては利用できない草や木などの生物資源をエタノールに変換することで、エネルギーとして利用するバイオ燃料。工業的に利用するにはまだまだそのエタノール生産効率が十分ではありません。草木に含まれる糖分を解析し、それに合わせて酵母を改良することにより、その生産効率を向上させようという研究が進められています。

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酵母

パンやビール、日本酒の発酵に使われている酵母。

現在ではこのような食品を作り出す以外にも、工業的な分野において重要性が増してきている。

その分野とは新しいエネルギーとして注目されているバイオ燃料を作り出すエネルギー生産における分野だ。

これまで世界中の工業において、石油や天然ガスなどの天然資源はエネルギーを生み出す燃料として用いられてきたが、その枯渇が言われるようになり、人が自分たちで生み出せる新しいエネルギーの開発が進められている。

その状況において、これまで発酵で使われてきた酵母が注目を浴びているのだ。

酵母は麦や米などに含まれる糖であるグルコースをエタノールに変える力をもっており、そのエタノールを飲料として用いるのではなく、エネルギーとして用いようというのがバイオ燃料なのである。

しかしながら、酵母が作り出すエタノールはまだまだ世界中のエネルギーとして用いるには量が足りなく、コスト的に採算が合わない。

そのため、いかにして酵母が作り出すエタノールの量を向上させるかが今後バイオ燃料がエネルギーとして使用できるかの鍵となっているのである。

エタノールにならない糖を変換する方法

ウィスコンシン大学マディソン校の研究チームは、これまでよりも約2倍のエタノールを作り出す酵母を開発したと報告した。

初期のバイオ燃料では、とうもろこしやさとうきびなど糖分を豊富に含む作物を利用し、エネルギーとして利用しようとしてきた。

しかしながらとうもろこしやさとうきびは日常的な食料としても用いられる。

そのため食料と拮抗してしまい、値段が上がってしまう。

そこで現在では、食料として用いることのできない草や木などに含まれるセルロースを分解し、グルコースに変換することで、エネルギーを生産しようとしている。

しかしながらそれだけでは世界のエネルギー事情を救うにはまだ足りない。

実は糖には、6つの炭素からなる六炭糖と5つの炭素からなる五炭糖がある。

六炭糖には日常甘み成分として使われるグルコースがあるが、酵母が効率的にエタノールに変換できるのは、六炭糖のみである。

そこで研究チームは通常エタノール生産に使われることのない五炭糖もエタノール生産に使えるような酵母があれば、エタノール生産の効率が劇的に向上するのではないかと考えた。

戦略的世代進化:Directed Evolution

そこで彼らがとった手法が戦略的世代進化(Directed Evolution)という手法である。

進化は世代を経ることに、環境に適応するように起こることが多い。

そこで研究チームは酵母を五炭糖であるキシロースが存在する環境下で培養することにより、キシロースをエネルギーとして用いることのできる酵母へと進化させようと考えたわけだ。

10ヶ月間、酵母を何百世代も育てることにより、研究チームはキシロースをエタノールに変換することのできるスーパーイースト”Y128″を作製することに成功した。

遺伝子にどんな変化が起こったのか?

研究は目的のものができたから終わりというわけではない。

学術的に酵母に何が起こったのか調べ、考察する必要がある。

そこで研究チームは酵母の全遺伝子、約5,200遺伝子を解析し、戦略的世代進化をする前の酵母と比較した。

その結果、4つの遺伝子に変異が起こっていることを明らかとした。

さらにこの4つの遺伝子が本当にキシロースからエタノールへの変換に影響を与えているのかを調べるため、この変異を進化させる前に戻したところ、エタノール生産量は元に戻った。

つまりはこの4つの遺伝子の変異は確かにキシロースからエタノールへの変換に寄与しているということになる。

キシロース自体は植物が作り出す糖の約半分を占めるため、これまでよりも2倍の生産量が期待できるというわけだ。

少しずつエタノール生産量を向上させている酵母。

今後もバイオ燃料を作り出す生物として研究が続けられ、その有用性を向上させていくことだろう。

生産効率を高めるというと、いかにそのプロセスを簡略化し、無駄をそぎ落とすかということを考えるかと思います。もちろんバイオ燃料を生産するため、酵母のエネルギーを他の物質に変換しないよう、生育に影響が出ないレベルで不必要な代謝系を機能しないようにするというう研究も盛んに行われています。

ですがその一方で、今回のようにエネルギー源として利用出来る物質を増やそうという試みも行われています。バイオ燃料は草や木など、様々な物質が含まれたものから出発することから、草木の中に含まれる成分をできる限りエタノールに変換することで生産効率を上げようというわけです。この考えは、様々なものが混ざっているバイオマスならではの考え方かもしれませんね。

もちろん草や木の種類によって、含まれる成分が異なることから、今後はエタノール生産に用いる出発物に対しての酵母のチューニングも行われることでしょう。例えばアメリカではとうもろこしや麦の生産量が多いことから、とうもろこしの芯や麦わらなどを効率的にエタノールに変換しようとするでしょうし、日本では米の生産量が多いことから、稲わらを出発物として用いる研究が進むことでしょう。出発物からどれだけエネルギーを絞りとることができるか、それがバイオ燃料が工業ベースに乗るかどうかの境目になることでしょう。

元記事はこちら(‘Super yeast’ has the power to improve economics of biofuels)

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