3Dプリンタを用いて、組織を作り出す!iGEM2016で金メダルを獲得したプロジェクト!〜LMU-TUM Munich〜

合成生物学の大会iGEM。そこで再生医療に新しい可能性を示したプロジェクトが金メダルを獲得しました。3Dプリンタを用いて、組織を作り出す、そんな挑戦をしたドイツのチーム。研究者顔負けのプロジェクトを推し進めている学生たちの研究です。

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iGEM:The International Genetically Engineered Machine competition

毎年マサチューセッツ工科大学で行なわれている合成生物学の世界大会iGEMの2016年大会の結果発表が行われた。

合成生物学とは、遺伝子操作を用いて、生命を自由にデザインし、新しい機能を持たせることにより、エネルギーや有用物質生産、情報処理などへ応用しようという学問である。

2016年の大会では、476のチームが独自のアイデアを競い合いあった。

iGEMではアイデアやプレゼンテーション、実験の達成度により、優れたチームに金、銀、銅のメダルが贈られる。

SIGでも前に東京大学がiGEMで金メダルを目指すため、学術系クラウドファンディング「academist」で出資を募っているのを紹介した。

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今回彼らは残念ながら、銀メダルに終わっているが、それでも素晴らしい成果だ。

iGEMと臓器移植

ミュンヘン工科大学とルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンの共同チームが、3Dプリンタを用いて組織を作り出すというプロジェクトで金メダルを獲得した。

現在、医療業界で大きな問題となっている一つが、臓器移植における臓器の不足である。

病気や事故などにより、臓器が機能不全になった場合、現在では健康な人や亡くなった人から臓器を移植するということが行なわれている。

だが、提供される臓器の数に比べ、臓器移植を待ち望んでいる人の数は膨大であり、苦痛や不便に耐えながら、何年も臓器移植の順番を待ち望んでいる人がいる。

その問題に立ち向かおうとしているのが、彼らなのである。

3Dプリンタと医療

現在でも3Dプリンタを医療に生かそうという試みはされている。

例えば、インペリアル・カレッジ・ロンドンとミラノ・ビコッカ大学の研究チームが行っている軟骨細胞の再成長を促す素材Bio-glassはその一つである。

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このように体内に細胞が増殖する足場を提供することで、細胞の再生を促そうという試みはすでに最先端科学では挑戦されている。

だが彼らの場合は足場ではなく、細胞そのものを3Dプリンティングし、組織を作り出そうとしているのだ。

彼らの挑戦

細胞を3Dプリンティングするためには、柔らかい細胞をどの様にして重ね、結合させるかということが問題となる。

これまでには足場となるゼラチン状の物質と細胞を交互に重ね合わせていく手法が考えられていたが、彼らは全く異なる手法を用いた。

彼らは細胞を特別なインクと混ぜることで、細胞自体に接着性をもたせ、形を作るという手法に挑戦したのだ。

そのため2つの成分を用いた。

一つ目はビオチン(ビタミンHとかビタミンB7としても知られている)であり、二つ目はストレプトアビジンという物質である。

この二つは強固に結合することが知られているバイオ由来の物質である。

そこで細胞をビオチンでコーティングし、ストレプトアビジンを加えると細胞がそれぞれ結合しあい、プリントできるようになる。

現在、再生医療は社会的にも重要な分野であるが、この様な挑戦が成功することにより、より一層身近なものになるのかもしれない。

iGEMは若い人たちが挑戦する大会だけあって、新しいアイデアがごろごろしています。もちろん世界中の企業もそれを期待し、スポンサードしているプロジェクトもたくさんあります。年々参加者が増え、活性化しているiGEMは合成生物学の新たな可能性を模索する場として素晴らしい成功を見せている大会でしょう。

このiGEMはマサチューセッツ工科大学で行なわれているのですが、こういった商業化につながるプロジェクトを推し進めることに関して、マサチューセッツ工科大学はものすごく積極的だなと感じます。これまで多くの記事でマサチューセッツ工科大学のプロジェクトを紹介してきましたが、多くはサイエンスをしつつ、商業化まで睨んだものになっています。日本の大学でも近年は特許取得や商業化などを考える様になってきていますが、ここまで推し進めている大学はないでしょう。

もちろん全ての大学が短期間で収益をあげる様な研究にシフトしてしまっては、新たなシーズを生み出す可能性のある基礎科学がなくなってしまいます。そうなると短期間ではいいかもしれませんが、長期的に見ると日本の科学が衰退してしまうことでしょう。

マサチューセッツ工科大学を見ると日本の大学受験は大学の特色で入る大学を決めるというよりも、偏差値で入る大学を決めるという傾向が強い気がします。基礎科学を推進する大学、技術開発を主に進める大学、商業化に向けた研究を行う大学と、大学ごとにもっと特色を出し、その大学の方針に共感したところで勉強できれば、日本の科学技術をもっと活性化させることができるのではないでしょうか。

元記事はこちら(Manufacturing Live Tissue with a 3D Printer)

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