MRIで遺伝子発現をモニタリングする?!アクアポリンを用いて、水と遺伝子をリンクさせる手法の開発!

重要だと分かっていてもなかなか調べることができないもの。そんなものの一つに遺伝子の発現があります。遺伝子からどれだけタンパク質を作り出すのか、それを制御することにより細胞の中ではバランスが取られているのですが、リアルタイムでそれを見ることは困難でした。そこでカルフォルニア工科大学の研究チームがMRIと遺伝子発現量をリンクさせる新しい手法を編み出しました。

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MRIで遺伝子発現を可視化する!

カルフォルニア工科大学の研究チームは、MRIを用いて体内の遺伝子発現を可視化する手法を開発した。

遺伝子は体内で様々な反応のスイッチとして働いており、DNAのエラーを修復したり、必要が無くなった細胞を取り除くといった制御は遺伝子の発現状態によりコントロールされている。

そのため、病気の治療やモニタリングにおいて、遺伝子発現を見るということは重要になりつつある。

しかしながら、生体の遺伝子発現状態を調べるのはそう簡単なことではない。

そこで研究チームは現在医療で用いられているMRIを使い、非侵襲的に遺伝子発現を検出する手法を考案した。

MRI:核磁気共鳴画像

MRIでは体内に存在する水素原子を磁場により励起し、その励起状態が解消される際に発せられるシグナルを読み取り画像化する装置である。

脳や筋肉、臓器、さらには血流を画像化することができるため、医療業界で解剖学的な知見を得るために広く用いられている。

このMRI画像を取得する際、水や脂肪に含まれる水素原子からのシグナルを検出することになる。

そこで研究チームが考えたのは、体内に存在する水からのシグナルと調べたい遺伝子の発現状態を関連づけることができたら、遺伝子発現を検出できるのではないかということだ。

アクアポリン

水の状態と遺伝子の発現状態をリンクするために研究チームが注目したのはアクアポリンと呼ばれるタンパク質だ。

このタンパク質は細胞膜に存在し、細胞内への水の出入りを制御している。

そこで研究チームは、遺伝子発現の増加に伴い、このアクアポリンの量を増加させることができれば、MRIで遺伝子発現を検出できるのではないかと考え、実験を行なった。

この手法をレポーター遺伝子アッセイといい、遺伝子操作により、調べたい遺伝子の発現がONになると、アクアポリンが合成されるという仕組みだ。

遺伝子発現をMRIで検出することに成功!

この様な仕組みをマウスの脳腫瘍に組み込んだところ、遺伝子発現とアクアポリンの量をリンクすることに成功し、遺伝子発現の量をモニタリングすることができた。

だがこの方法には一抹の不安が残る。

アクアポリンを細胞に過剰に作らせることで悪影響が出るのでは無いかという不安だ。

しかしながらアクアポリンは単に水を細胞内外でやり取りするだけであり、細胞内の水の量を調整するため、細胞内の水の総量は変化することはない。

つまりあくまでも遺伝子発現の検出には有用であるが、細胞にとってななんの変化もない便利なタンパク質なのである。

もちろんヒトにこの技術を使うためにはまだまだ高いハードルは存在するだろうが、遺伝子発現のバランスが乱れることで起こる病気もあるため、医学として重要なツールとなることだろう。

この研究は医学的にも学術的にももしかしたら新しい時代を切り開くツールになるのかもしれません。これまで遺伝子発現量を調べようと思ったら、細胞をすり潰し、その中のmRNA量を調べるという手法で行われていました。しかしまだまだこの手法はコストも高く、細胞を殺さなければいけないというデメリットも存在します。

今回の手法で、非侵襲で、そしてリアルタイムに遺伝子発現量を調べることができたら、これまで謎に包まれていた遺伝子発現と病気の関連性や生命の謎を明らかにする研究が加速されることでしょう。遺伝子解析技術が発展してきたとはいえ、まだまだ調べるのが困難な領域が残っている遺伝子。今後、どのように研究が発展していくのか楽しみですね!

元記事はこちら(Visualizing Gene Expression with MRI)

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