免疫が起こる前の分子メカニズムを研究することにより、真菌類と戦うための、重要なタンパク質が判明した?!

感染症は、医療が発達した今でもなかなか防ぐことのできない厄介な病気です。一体どうしたら、感染症と効率良く戦うことができるのか、その解答を免疫系に求めて、研究している研究者もいます。ですがまだまだ不明な点もある免疫系。その謎が解明されることにより、新たな治療につながると期待されています。

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免疫系の前段階反応

ミュンヘン工科大学の研究チームは、真菌類の感染に対する防御反応のメカニズムを解明したと報告した。

体内に侵入したウイルスや微生物、真菌類などと戦うために、体内には複雑なセキュリティーシステムが存在する。

広く知られているのは免疫系で、血中に存在する細胞が体内に侵入した病原体を認識し、それを取り除く働きを担っている。

その免疫系が働く前においても、体内では分子レベルにおいて複雑な生化学的反応が起こることが知られている。

しかしながら、ある免疫反応の研究は進められていても、この前段階に起こる生化学的反応に関してはあまり研究が進められていないのが現状である。

C型レクチン受容体とCARD9

免疫系の前段階で働くたんぱく質としては、C型レクチン受容体が知られている。

この受容体は血液細胞の細胞膜に存在し、真菌に存在するある種の分子を認識することにより、免疫反応を開始させる役割がある。

またCARD9と呼ばれるたんぱく質も免疫反応の前段階で重要な役割を担っていることが知られており、CARD9が体内に存在すると、免疫反応が開始され、体内に侵入した真菌を破壊する。

Vavタンパク質

研究チームは今回、CARD9が機能するにあたり、Vavと呼ばれるタンパク質が活性化されることが必要であることを明らかにした。

人の体内ではVav1、Vav2、Vav3の3種類のVavタンパク質が存在するが、この3種のVavタンパク質全てが不活性化された状態では、たとえCARD9が存在していても、ある種の真菌に感染しやすくなる。

これまでVavタンパク質は、病原菌が感染した際に誘導される免疫である獲得免疫(適応免疫ともいう)に関連していると考えられてきたのだが、今回の研究結果は、生まれつき備わっている免疫である自然免疫の一種であるという。

Vavタンパク質の変異

また研究チームは、自然免疫におけるVavタンパク質の重要性を証明するために、実際の患者の遺伝子データを解析した。

カンジダ菌や酵母に感染している人においては、Vavタンパク質の遺伝子にある種の変異が見られるという。

その変異はVav3タンパク質の構造を変化させると考えられる。

また過去の実験により、Vav3タンパク質が存在しない状況では、免疫反応に大きな影響を与えることが明らかとなっている。

今回の研究により、Vavタンパク質が真菌の感染に対する免疫系に重要な役割を担っていることが判明した。

この研究結果は今後、感染症リスクの評価や治療において貢献できると期待されている。

免疫系というともうほとんど解明された生体プロセスだと思っていたのですが、免疫反応が起こる前の反応に関してはまだまだ分かっていないことも多いのですね。

生体内での反応はカスケード系と呼ばれる連鎖反応で行われることが多いのですが、これは連鎖反応だけではなく、増幅反応も担っています。つまりある刺激Xが起こり、そのシグナルがA、B、Cと伝えられていく際、1個のXに対し、1個のAを活性化されたとすると、その後、1個のAが10個のBを、そしてさらに1個のBが10個のCを活性化し、シグナルを100倍に増幅するということが行われます。

つまり後々の反応の方が顕著に現れ、分子の数としても多いため、検出しやすいということがあるのです。逆に最初の方の反応は、ごくわずかなので、なかなか検出は困難になります。科学技術が発達し、現在、そういったごくわずかな反応でも検出できるようになってきています。今後、わずかな反応の重要な作用が解明されることにより、人体の謎、そして医療へと役立てられていくことでしょう。

元記事はこちら(Important element of immune defense against fungal infections discovered. New key players found in fighting fungi)

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