薬剤を超音波で運び、治療を行う?!分解されやすいRNAでもその効果を実証!

これまで治療ができなかった疾患においても、治療ができるようになる可能性があることから、世界中で注目されている遺伝子治療。しかしながら、どうやって遺伝子を目的の場所まで、効果を保ったまま運搬するのかということが大きな課題となっています。その一つの解決策として、超音波を使う方法が開発されました。

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超音波で遺伝子を運ぶ!

マサチューセッツ工科大学とブリガム・アンド・ウィメンズ病院の共同研究チームは、超音波を用いて体内でRNAを効率的に運び、治療を行う方法を開発した。

細胞にRNAのような核酸(遺伝子)を運搬することで、その遺伝子が対象にしているタンパク質の量を増加させたり、減少させたりすることができる。

近年では、体内のタンパク質の量が関連している病気が多数あり、遺伝子を用いた治療は注目を浴びている。

だがその治療において困難なのが、目的の場所に遺伝子を運搬することである。

もし間違った場所に運搬されてしまうと、効果がないどころか、副作用が出てしまうことも考えられる。

いかに目的の場所に目的の遺伝子を運ぶのか、それが遺伝子治療において重要な課題なのである。

コーティングは不必要?!

研究チームは、これまでよりも簡単な方法で遺伝子を運ぶ手法を開発した。

それが超音波を用いるということである。

通常、遺伝子を目的の場所に運ぶためには、遺伝子を何らかの物質で囲い、カプセル化し、そのカプセルの外側を目的の場所で留まるよう抗体や化学物質でコーティングする。

しかし今回の方法では、そのようなコーティングは必要なく、遺伝子をそのまま運搬することができるという。

研究チームは今回、胃腸疾患においてこの手法が効率的に遺伝子を運ぶことができることを明らかとした。

薬剤ではなくRNAを運ぶことの困難さ

この研究チームは2015年においても、消化管に薬剤を運ぶため、超音波が効果的であることを報告している。

今回の研究では、薬剤ではなく、RNAを運搬しているのが大きな違いだ。

薬剤であれば、消化管においてある程度安定に存在できるのだが、RNAはそうはいかない。

RNAはものすごく繊細な物質であり、消化管では即座に分解されてしまい、効果を失ってしまう。

そのため多くの研究では、RNAを消化管による分解から守るため、どのようにしてパッケージするのかということに注力している。

超音波の特性を利用

今回の手法では、目的の場所に運ぶためのコーティングも分解から守るためのパッケージングも必要がない。

液体に超音波を当てると、一時的にキャビテーションが起こり、小さな泡ができる。

この泡にRNAを入れ込み、分解から保護しつつ、体内を移動させ、目的の場所にきたら、破裂させることで、遺伝子を細胞の中に注入するという仕組みだ。

TNFα

今回研究チームは大腸炎を患っているマウスを用い、炎症に関連する遺伝子であるTNFαの機能を抑えるようなRNA(siRNA:Short Interference RNA)を大腸の細胞に注入した。

その手法としては、RNAを溶かした水を浣腸により大腸に送り込み、小さな超音波発生器で即座に20kHzから100kHzの超音波を0.5秒間隔で照射した。

TNFαは過剰に生産されると炎症を起こす原因となるタンパク質であり、この手法で治療したマウスは7倍から10倍TNFαの量が減少し、炎症はほぼ消え去ったという。

さらにタンパク質を生産させるようなRNA(mRNA:messenger RNA)での実験も行なっている。

mRNAはsiRNAよりも大きく、運搬や細胞への注入が困難であると考えられる。

研究チームはホタルが光を発するためのタンパク質をコードしたmRNAをこの手法により細胞に注入したところ、細胞が光を発したことが確認でき、タンパク質を作らせるためにもこの手法は有用であることが明らかとなった。

今後、RNAが治療に用いられることが増加すると考えられるが、このように簡単な手法により、目的の場所まで、効果を保ったまま運搬できるようになれば、様々な疾患の治療に大きく貢献することだろう。

遺伝子治療を含む現在の薬物治療では、目的の場所まで運ぶのがネックとなっています。何故なら体内に注入するということは、血液の流れに沿って全身を駆け巡ることになるからです。現在の薬剤においても、全身を駆け巡った際の濃度において、効果を発揮するようにデザインされており、現状では一つの場所に薬剤を留まらせるというのは困難なのです。

その一つの例として抗がん剤があります。がん細胞はもともと正常な細胞から変化してしまった細胞であり、薬剤のターゲットとなるタンパク質や遺伝子は正常な細胞にも存在しています。そのため抗がん剤を体内に注入すると、全身に作用してしまい、強い副作用が出てしまうのです。もし現状の抗がん剤でも、がん細胞に留まる仕組みができれば、副作用が減少すると考えられ、そのような研究も進められています。

人間の身体というのはものすごく複雑で、その中の物質の行き先を正確にコントロールしようとするのは大変困難なことですが、それが少しずつできるようにしてきているのが最先端の科学技術です。いつの日か体内の物質移動をコントロールできるようになれば、副作用のない薬物治療が可能になるのかもしれません。

元記事はこちら(RNA hitches a ride on ultrasound waves. Technique enables rapid delivery of RNA to treat colon inflammation.)

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