アルコールが及ぼす脳への影響の解析!マウスとヒトの実験結果の違いから得られた新しい知見!

思春期においてアルコールを摂取すると脳の成長が阻害されると言われています。今回、アルコール依存症の人の脳の活動を解析したところ、これまで得られていた実験結果とは異なる結果が得られました。その結果を考察したところ、今回の研究結果は脳の認知機能回復の新しい治療法を切り開くかもしれないと期待されています。

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アルコールと脳細胞のダメージ

インペリアル・カレッジ・ロンドンとキングス・カレッジ・ロンドンの共同研究チームは、アルコール依存症の患者の脳細胞がダメージを受けていることを報告した。

アルコール依存症の人がアルコールの摂取を控えると、記憶や計画立案、行動など認知機能において影響が出ることが知られている。

ミクログリアの過剰な活性化

これまでの研究により、このような症状はミクログリア(小膠細胞)と呼ばれる神経細胞やシナプスの維持、免疫応答に関わる脳細胞の機能が過剰に活性化されてしまうことから起きることが明らかとなっている。

このミクログリアが過剰に活性化されてしまうと、様々な化学物質が放出され、健康な神経細胞がダメージを受けてしまうのだ。

そしてそれが蓄積すると、アルツハイマー病やパーキンソン病のような脳障害が引き起こされることが示唆されている。

これまでの研究ではマウスを用い、アルコールを過剰に与え、アルコール依存症としたのち、アルコールの摂取を抑えると、ミクログリアの過剰な活性化と脳障害が引き起こすことが見出されてきた。

そこで同じ現象が人間にも起こっているのかを検討したのが、今回の研究である。

マウスの実験とは逆の結果?

今回研究チームはアルコール依存症の患者と健康な人のミクログリアの活性状況を比較した。

その結果は、驚くべきことに、彼らが考えていたものとは逆のものだった。

つまりはアルコール依存症の患者がアルコールを摂取していない状況では、ミクログリアの活性は健康な人よりも低かったのだ。

また健康な人においては、記憶に関わる脳の部位である海馬において、ミクログリアの活性が高いことが明らかとなった。

マウスとヒトの結果が一致しない理由

マウスとヒトの結果が一致しない理由に関して、研究チームは以下のように考察している。

今回、アルコール依存症において、検討したのは中高年の患者においてである。

しかしながらマウスのモデルでは、人間でいう思春期に当たる年齢のマウスを用いている。

つまり思春期におけるアルコールの過剰摂取における影響と類似しているというわけである。

言い換えると中高年におけるアルコール依存症による脳細胞のダメージよりも、思春期におけるアルコール過剰摂取の方が影響が大きいということが示唆されたのである。

またアルコール依存症の人におけるミクログリアの活動が低下していたのは、もうすでにダメージを受けており、正常に機能していないことが考えられる。

新しい知見とは?

これまでアルコール依存症の患者の脳ではミクログリアの活性が上昇していると考えられてきたのだが、事実は全くの逆だったことが今回の研究により明らかとなった。

そしてこのことはこれまでミクログリアの活性により脳がダメージを受けていたと思われてきたのだが、実は修復している過程であったというポジティブな考えを支持するものである。

つまりその時点では脳細胞は回復可能であり、ミクログリアの活性化状態が長期間続き、脳細胞が回復不可能にまで破壊されると、認知機能が低下すると考えられる。

この知見は脳の認知機能回復のための治療法の回復に重要な意味をもつものだと期待されている。

研究を行なっていると、これまで考えられていた学説とは異なる結果が得られることは多々あります。それを実験がおかしいのか、それとも学説がおかしいのかというのを見極めるのはなかなか難しいことです。研究チームも最初かなり困惑し、何が起こっているのか思案したことでしょう。

アルコールに関しては、過剰摂取すると肝臓だけではなく、脳にも重大な影響を及ぼすことはこれまでの研究でも分かっていました。しかしながらまだまだどのようなメカニズムでそれが起こっているのか、そしてアルコール関連疾患をどのように治療していけばいいのかというのは分かっていないことも多いことでしょう。

アルコールに関しては、社会との繋がりを強め、幸福感を感じるためにも重要であることが別の研究により報告されています。

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あくまでもほどほどに楽しみ、飲みすぎないように心がけたいものですね。

元記事はこちら(The brains of alcohol dependents and binge drinkers may recover differently)

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