遺伝子治療が子供を救う!新生児の重度な免疫疾患の治療に新しい希望を!

免疫が機能しないというのは、環境の細菌やウイルスへの抵抗性がなく、重篤な病状を引き起こしてしまいます。そして生まれた時から免疫が機能しない重症複合免疫不全症は難病指定もされている治療が難しい病気です。遺伝子治療という新しい治療法がその難病を治療する突破口となることが期待され、研究が進められています。

スポンサーリンク

SCID: Severe Combined ImmunoDeficiency

カルフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームは、重度の免疫疾患をもつ新生児に新しい治療法として遺伝子治療を試みることを報告した。

彼らが治療の対象としたのは、Severe Combined ImmunoDeficiency(SCID: 重度複合免疫不全症)であり、Bubble boy diseaseと呼ばれる免疫疾患だ。

免疫をコントロールするT細胞の数が少なかったり、正常に機能しないため、免疫反応を十分に起こすことができず、細菌やウイルスに感染しやすくなってしまう病気である。

X連鎖性重症複合免疫不全症

今回は、そのSCIDの中でもX連鎖性重症複合免疫不全症という約60,000人に1人の割合で起こる疾患に焦点を当てている。

このX連鎖性重症複合免疫不全症というのは、XとYの性染色体のうちX染色体に異常があると発症する。

性染色体は通常2つもっており、XXとなると女性、XYとなると男性となる。

女性では片方のX染色体に異常があってももう一方のX染色体により機能が補完され、問題とならないが、男性のX染色体に異常があると免疫不全を起こす。

そしてこの様な免疫不全をもつ新生児は、生まれた時には正常に見えるのだが、3ヶ月から6ヶ月あたりで皮膚の発疹や体重が増加せず、治療をしない限りは1年以内になくなってしまう。

現在の治療法

現在その治療法は骨髄移植であり、まず患者の骨髄を抗がん剤や放射線で破壊したのち、正常な機能をもつ骨髄を移植するという流れだ。

しかし骨髄移植では20%程度の患者はその後自己免疫疾患、つまり免疫細胞が自分の組織を攻撃してしまうことによる疾患を発症することがある。

そのため移植ではない新しい治療法が期待されていた。

遺伝子を送り込む!

研究チームはCalifornia Institute for Regenerative Medicineから、5年間で1190万ドル(約13.6億円)の資金を得て、15人の子供に対して遺伝子治療の検討を行っている。

治療法としては、機能不全の遺伝子の代わりに、患者の造血幹細胞に機能する遺伝子を送り込んでやるという方法だ。

もし送り込んだ遺伝子が正常に機能するのであれば、これまで骨髄移植に頼っていた治療に替わる新しい治療法となる。

そのため移植による自己免疫疾患を起こすことなく、患者にとってQOLが大幅に向上することが期待される、

我々は普段なかなか免疫の大切さを感じることはできませんが、日々膨大な数の戦いを制し、病気から守ってくれる免疫というのは身体の機能の中でも特に重要です。しかし機能しないと細菌やウイルスに対してなんの防御力もなく、また正常に機能しないと自分自身を攻撃してしまい、そしてそのどちらも命に関わることから、その絶妙なバランスを保っているのは、奇跡といえるのかもしれません。

実はこのX連鎖性複合免疫不全症に対して、遺伝子治療を行うのは今回が全くの初めてというわけではありません。これまでにも何例か報告されているのですが、重大な副作用として白血病を発症してしまうことがあります。その原因は遺伝子を入れる際に用いられるレトロベクターというものにあると言われています。

レトロベクターとはレトロウイルスと呼ばれる遺伝子を書き換える能力をもったウイルスの遺伝子から作られた遺伝子を書き換えるための遺伝子のことです。X連鎖性複合免疫不全症以外にも遺伝子治療が行われるようになり、その原因が明らかになりつつある今、より安全な遺伝子治療を行うために研究開発が進められています。

最初は今回のような難病に用いられていますが、もし安全性が明らかになれば、少しずつ他のより一般的な病気への利用も進むことでしょう。近年では高血圧や肥満など生活習慣病も遺伝子が原因の場合があるということも報告されているので、そういった疾患の治療にも使える様になると社会に大きなインパクトを与えることでしょう。

元記事はこちら(Gene Therapy Offers Hope for Newborns with Severe Immune Disorder)

この記事を読んでくれたあなたへひろやんからのオススメ記事

遺伝子から高血圧のリスク評価!サイレントキラーをあぶり出す遺伝子解析とは?!
高血圧はサイレントキラーとも呼ばれ、知らず知らずのうちに病状が進み、ある時突然心筋梗塞や脳卒中を発症します。そのリスクを事前に知っておき、日頃から...
ジャンクDNAは”ジャンク”ではない?!大規模遺伝子解析が切り開く新しいがん治療のターゲットとは?
ゲノム編集で有名となっとCRISPR。この技術を応用して、ジャンクDNAの機能を明らかにしようという研究が進められています。そしてその研究が明らか...