注射に変わる新しいワクチンの接種方法の開発。痛みがなく、誰でも使えるデバイスを目指して!

毎年冬になると流行するインフルエンザ。ワクチンを接種し、重症化しないように対策している人もいることでしょう。でもワクチン接種と聞くと、病院へ行き、痛い注射を我慢しなければいけないので、気が引ける人がいるのも確か。もし家でも使えて、痛くないワクチン接種方法があったら、もっとワクチンを接種しようという人が増えると思いませんか?

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口の中の免疫を向上させるデバイス

カルフォルニア大学バークレー校の研究チームは、口の中の免疫細胞にワクチンサイズの薬剤を運ぶことのできるデバイスを開発した。

そのデバイスの名前は、Mucojetという。

口は呼吸や食物の摂取などにより、他の部位よりもウイルスと接触する可能性が高い部位である。

そのため口の免疫系にワクチンを接種し、免疫機能を高めることは感染防止に大きく役立つと考えられる。

Mucojet

Mucojetはその長さ15ミリメートル、直径7ミリメートルの円柱状のデバイスだ。

このデバイスは3Dプリンタにより、安価な生分解性、そして耐水性プラスチックから出来ている。

構成としては、二つの部位から出来ており、一つはワクチンを打ち出すためのピストン部位と、もう一つはワクチンを貯めておく部位である。

ピストン部位にはフィルターで二つの空間に分けられており、そこには混合することで二酸化炭素ガスを発生させる薬剤が仕込まれている。

使い方は、このピストン部位を潰し、二つの薬剤を混ぜ、頬に含ませる。

ある一定時間が経ち、二酸化炭素が十分にデバイス内に溜まるとノズルのフィルターが破れ、ワクチンが排出される。

このようなシステムにすることで、誰が使っても同じ勢いで薬剤が排出され、使用者による効果のバラツキが抑えられる。

8倍も効率が上昇!

研究チームは実際にMucojetによるワクチンの接種が口腔内の免疫系を高めることができるか動物細胞を使った実験で検討している。

彼らはブタの頬からシート状に細胞を取り出し、免疫を刺激するタンパク質であるオボアルブミンをこのデバイスにより注射した。

そしてこの細胞シートを通り抜ける量により、どれくらい体内に取り込まれるのかということを検討した。

その結果、Mucojetを使うことで、使わなかった時に比べ、3時間以内に約8倍もオボアルブミンが細胞シートを通り抜けることが明らかになった。

今回の研究では、注射との比較はされていないのだが、少なくとも免疫を活性化させるのに十分なワクチン量を体内に送り込むことができ、特に口腔内の免疫系を高めるには注射と比べ簡便で、痛みも少ない方法であることが言えるだろう。

研究チームは今後、実際の動物と本物のワクチンを用い、研究を進め、5年から10年程度で販売できるようにしたいと考えている。

知っている人も多いと思いますが、あえて言いますと、ワクチンはウイルスの感染を予防するものや体内に入ったウイルスを殺すものではありません。あくまでも感染した際、重症化しないようにするためのものです。そこにはウイルスの特異な性質があります。

例えば病原菌に感染した場合は薬(抗生物質)を飲み、病原菌を殺そうとします。それは病原菌が生きていて、代謝をしているからできること。要するに病原菌も栄養をとって、成長し、子孫を残してのサイクルを行なっています。だから病原菌にとって毒となる物質を与えてやることで、病原菌を殺すことができます。

ですがウイルスは、このように外から栄養を取り、代謝し、成長し、子孫を残すということはしません。簡単に言うとタンパク質が遺伝子を包んでいるだけの”物質”です(学術的に生物か物質化は別として、ここでは簡易的に表現します)。生きていないただの物質に対し、毒となるものは存在しないわけです。でもウイルスは増殖します。それは生物の細胞の中で遺伝子やタンパク質を増やす機構を乗っ取り、自分を増やさせているのです。

現在、ウイルスと戦う術としては、抗ウイルス薬とワクチンが存在します。抗ウイルス薬は体内に入ったウイルスが細胞の中に侵入しないようにしたり、細胞の中でウイルスのタンパク質や遺伝子を作らせないようにする薬です。つまりウイルスを殺したり、取り除いたりするわけではないのです。ではウイルスを体内から取り除くにはどうしたらいいのか。その答えがワクチンです。

ワクチンは無害化したウイルスを体内に意図的に入れることで、こんなウイルスがいるということを身体の中の免疫に学習させるものです。ウイルスを取り除くのは、免疫系の仕事ですが、知らないウイルスが急に入ってきた場合、免疫系がこれは敵なのかと認識したり、どんな敵なのかを分析するのに時間がかかります。そしてその間に大量のウイルスが複製され、身体に影響を及ぼしてしまいます。

ですがもし最初から自分にとって敵だと知っていたら、すぐに取り除く体制を構築することができます。そしてウイルスが感染して即座に免疫系が排除することができれば、大量のウイルスが複製されず、症状が重症化することがないというわけです。

現代ではこうした感染症への対策はいろいろあり、どのように予防したらいいのか複雑化しています。それぞれの性質を正しく理解し、準備や対応をすることが、自分を守ることにつながるのではないでしょうか。

元記事はこちら(Oral delivery system could make vaccinations needle-free)

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