ハンチントン病の原因のさらなる解析法の構築!ハンチントン病の全てを暴き、治療法の確立に貢献できるか?!

日本では特定疾患に指定されているハンチントン病。遺伝病であるハンチントン病は、その原因遺伝子が同定されているものの、治療法の開発には至っていません。それは細胞内で起こる複雑な反応である翻訳後修飾が、病状と深く関わっているからだと考えられています。そこでまずはハンチントン病の全容を解明しようと、研究が進められています。

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ハンチントン病

1872年にアメリカの医師ジョージ・ハンチントンにより報告された難病、ハンチントン病。

かつては舞踏運動と呼ばれる手足が勝手に動いたり、首を動かしたりと、自分の意思とは無関係に素早い動きをすることから、ハンチントン舞踏病と呼ばれていた。

だが舞踏運動が症状となる病気はこの病気だけではないため、ハンチントン病へと改名されている。

その原因となる遺伝子はすでに特定されており、huntingtin遺伝子という遺伝子に異常が生じることが原因であることが明らかになっている。

huntingtinタンパク質の異常がハンチントン病を引き起こす?!

このhuntingtin遺伝子中には、アミノ酸のグルタミンを指定するCAGという配列が繰り返されており、通常は11〜34回繰り返されているのだが、ハンチントン病の患者の場合は、37〜876回繰り返されている。

そのため、通常のhuntingtinタンパク質よりも細胞内で凝集しやすくなってしまうことで、毒性を示していると言われている。

現在、治療法は存在していないのだが、治療薬の研究開発が行われており、huntingtinタンパク質の凝集を遅らせるよう、化学物質をhuntingtinタンパク質に結合させる治療薬が考案されている。

しかしながら、細胞の中には多種多様なタンパク質が存在していることから、狙ったタンパク質に、そして狙った場所に結合させることは非常に困難である。

翻訳後修飾

スイス連邦工科大学ローザンヌ校の研究チームは、ハンチントン病の詳細な原因の解明と将来の治療法の開発に向けて、huntingtinタンパク質の特定の部位に化学物質を結合させる手法を開発したと報告した。

タンパク質の中には遺伝子から作られた後、そのまま機能を発揮するのではなく、化学物質が結合することでスイッチオンとなるタンパク質が存在する。

このような現象を翻訳後修飾という。

遺伝子からタンパク質が作られることを翻訳、そしてその後に特定の酵素を用いて化学物質が修飾するということからつけられた名だ。

この時、修飾する物質としては、りん酸や糖、脂質、アセチル基などがある。

huntingtinも翻訳後修飾を受けるタンパク質なのだが、どのような酵素が翻訳後修飾をコントロールしているかは未だ不明である。

酵素を同定しなくても修飾できる!

そこで研究チームは、huntingtinを修飾する酵素を同定せずとも、huntingtinを修飾できる手法を編み出した。

その手法とは、huntingtinの凝集を抑制する化学物質と微生物により合成したタンパク質を用い、病的なhuntingtinタンパク質において、どのような翻訳後修飾が凝集に影響するのか検討するという手法である。

彼らはこの手法により、凝集を抑制する翻訳後修飾の詳細な位置を同定し、今回の研究結果に至ったのである。

病気を引き起こす遺伝子やタンパク質が明らかになったとしても、翻訳後修飾の違いにより、病状に大きな差異を生み出すハンチントン病。

その詳細が明らかになることにより、新たな治療薬の開発が加速されることが期待される。

普段は意識していませんが、ヒトの身体というものは本当によく出来ており、遺伝子やタンパク質などの物質で埋め尽くされた細胞内で、ものすごく複雑な制御がなされています。こういうことを知ると、何故人間の身体をロボットで完全に再現することができていないのか分かるような気がします。

今回紹介した翻訳後修飾もその一つ。タンパク質を作ったとはいえ、いつでも機能してもらっては困るなんて場面も、細胞内では多く存在します。逆にいつもは機能していて欲しいけども、ある時期だけ機能しないで欲しいという場面も。つまりタンパク質の機能をオンオフするというのは、細胞を維持するために重要な機構なのです。

そのスイッチが壊れることで、今回のようなハンチントン病やがんなど重篤な病気を引き起こしてしまいますが、ヒトの身体の中には約3万種と言われるほど膨大な種類のタンパク質が存在します。その一つ一つに対して、翻訳後修飾がされているのか、されているとしたらどこにどんな翻訳後修飾がされているのか解明していくのは膨大な時間と費用がかかります。

ヒトゲノム計画が終わり、ヒトの遺伝子が全て解読された今、その遺伝子からできるタンパク質の機能や機構を解明するポストゲノムの時代と言われています。新たな技術が開発され、解析スピードは日々加速されていますが、まだまだ生命の謎を解き明かすには時間がかかりそうです、

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